特別研究員の採用3年目では、原始惑星系円盤内(以下、円盤)に埋もれた成長途中の惑星が周囲のガスとダストに及ぼす影響に着目した研究を行った。近年の円盤観測から、円盤内のダストの空間分布にリング・ギャップ構造と呼ばれる構造が多数見つかっている。この構造の起源として円盤内に存在する惑星の影響が議論されている。 今年度は、最新の高解像度3次元流体計算から明らかになった惑星周りのガスの流れ場に着目し、ガス流れ場が小さなダストの運動を変化させることによってダストのリング・ギャップ構造が形成されることを数値的に解明した。ダストのリング・ギャップ構造形成に関する従来研究の多くが木星質量程度の大質量惑星を想定する一方、我々が行った研究は地球質量程度の小質量惑星でもリング・ギャップ構造形成が可能であることを示した点で新しく、研究成果をまとめた論文は国際誌に掲載済である。また、複数の学会発表も行った。 さらに、本年度の後半には数値計算結果と整合的な解析モデルの構築にも取り組んだ。3次元流体計算は計算コストがかかるため、幅広いパラメータに対して研究を行うことは困難である。我々は流体計算結果の詳細な解析を行い、惑星周りのガス流れ場の物理的・幾何学的性質を明らかにすることで、流体計算結果と整合的な解析式の導出に成功した。得られた解析式を用いることで、惑星が駆動するガス流れ場、及びガス流れ場の影響下でのダストの運動をモデル化することが可能になると期待される。将来的には円盤観測結果とのより定量的な比較も行えるようになり、円盤内で進行する惑星形成過程のさらなる理解に繋がるだろう。これらの研究成果に基づき複数の学会発表を行っており、研究成果をまとめた論文は近々国際誌に投稿予定である。
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