研究課題/領域番号 |
20J20769
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
白川 大樹 北海道大学, 大学院工学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 水系感染症 / ウイルス様粒子 / 遺伝子封入 / ノロウイルス / 病原ウイルス |
研究実績の概要 |
本研究では,培養困難なノロウイルスについて,高感度に定量可能な外来遺伝子を封入したウイルス様粒子(遺伝子封入VLPs)を創製し,これを用いた室内実験を実施することにより,水道原水に近い濃度におけるノロウイルスの物理的な浄水処理性を,培養法に頼ることなく詳細に評価することを目的とした.また,浄水処理工程における病原ウイルスの挙動指標としての有効性が示されつつあるトウガラシ微斑ウイルス(PMMoV)について,ノロウイルスの遺伝子封入VLPsとPMMoVを同時添加した室内実験を実施することにより,ノロウイルスの挙動指標としてのPMMoVの有効性を議論すると共に,実浄水処理場におけるノロウイルスの処理性を,実浄水処理場におけるPMMoVの処理性評価結果から推定することを目的とした. 本年度は,昨年度に引き続き,当研究室において現有しているGI.4型ノロウイルスについて,遺伝子封入VLPsの創製を試みた.昨年度までの検討において,遺伝子そのものをVLPs内部に直接封入することは困難である可能性が考えられたため,予備検討においてVLPs内部に封入可能であることが明らかになった金ナノ粒子に遺伝子を修飾し,これをVLPs内部に封入することを検討した.GI.4型ノロウイルスの塩基配列をコードする複数種の人工合成DNA(直鎖,65-75塩基)を金ナノ粒子に修飾し,得られたDNA修飾金ナノ粒子を封入処理実験に供したところ,金ナノ粒子を介することにより,DNAをVLPs内部に封入できる可能性が示唆された.一方,実浄水処理場におけるウイルスの処理性評価については,凝集-UF膜処理におけるPMMoVの低減率が2-4 log程度であり,昨年度までに調査してきた凝集-MF膜処理における低減率(1-3 log程度)よりも幾分高いことが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,遺伝子封入VLPsの創製について,VLPs内部に封入可能な金ナノ粒子を活用した外来遺伝子の封入に着手し,大きな進展が見られた.また,実浄水処理場におけるウイルスの処理性評価についても,低圧膜ろ過浄水施設における知見の集積を進められたことから,研究計画は概ね順調に進展しているものと判断した.
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今後の研究の推進方策 |
来年度は,GI.4型以外の遺伝子型のノロウイルスについても,VLPs内部に封入可能な金ナノ粒子を活用した遺伝子封入VLPsの創製に取り組むと共に,得られた遺伝子封入VLPsを用いた室内実験を実施することにより,水道原水に近い濃度におけるノロウイルスの物理的な浄水処理性を詳細に評価する.また,実浄水処理場におけるウイルスの処理性評価については,同一原水における凝集沈澱-砂ろ過処理及び凝集-MF膜処理のウイルス除去性能を直接比較するため,砂ろ過方式からMF膜処理方式に更新した浄水施設を対象に,調査を実施する.
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