研究課題/領域番号 |
20J20770
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
唐崎 航平 広島大学, 医系科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 腹部大動脈瘤 / 運動療法 |
研究実績の概要 |
近年、運動療法が腹部大動脈瘤(abdominal aortic aneurysm: AAA)の予防・治療に有用である可能性が指摘されている。本研究の目的は、運動療法によるAAAの予防・治療に関連する基礎医学的知見を探索することである。 まず、運動療法がマウスAAAモデルに与える影響を検討した。運動療法にはトレッドミル装置を用いた走行運動を採用し、マウスAAAモデルには外科的処置により血管壁に炎症を惹起し、組織破壊とAAAを誘導するモデルを採用した。トレッドミル装置を用いた走行運動の継続的な実施は、マウスAAAモデルにおいて、血管組織の破壊と大動脈径の拡大を抑制した。加えて、AAAの発症に中心的な役割を果たすと考えられている分子経路の活性化が運動療法の実施により抑制された。さらに我々が維持しているAAAが重症化する遺伝子改変マウスを用いたAAAモデルに対して運動療法を適用したところ、AAA重症化を誘導する炎症関連因子の発現が減少し、AAAの重症化が抑制された。 以上のようにトレッドミル装置を用いた運動療法は炎症誘導性のAAA形成と遺伝子改変マウスにおけるAAA重症化を軽減したため、定期的な運動は炎症が関与するAAAの発症・進展の抑制に極めて重要な因子であると推測された。 我々は上記の運動療法によるAAA発症・進展抑制に関連する機序として、運動による酸化ストレスの低減作用やAAA組織における抗炎症作用を推測している。現在、それらの作用に関連すると推測される分子の発現が運動療法により増加することを見出しており、今後はそれらがAAAの病態へ及ぼす影響を精査する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、運動療法によるAAA進展抑制効果を複数のマウス系統で観察できている。また、その進展抑制効果に関連する可能性のある分子についての検討を開始しており、研究計画に照らし合わせて進展状況に目立った遅れは認められない。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度の検討において、運動療法はAAAの発症・進展に関連する炎症誘導性の分子機序に抑制的に作用しているものと推測された。 今後は運動療法によって発現が上昇した分子に注目し、それらが運動療法のAAA進展抑制効果に関与しているか検証する。 in vivo実験では注目している分子を人為的にマウスAAAモデルに導入する実験を行い、運動療法と同様にAAA発症・進展抑制効果が得られるか検討する。in vitro実験では培養細胞を用いて、注目している分子がAAA進展を抑制するメカニズムの解明を図る。
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