研究課題/領域番号 |
20J20823
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
平野 知之 広島大学, 先進理工系科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | ナノ構造化微粒子 / 火炎噴霧熱分解法 / 管状火炎 / エアロゾルプロセス / ナノ粒子 |
研究実績の概要 |
2020年度は,新規火炎バーナの開発と火炎構造の解析,新規管状火炎燃焼を用いたナノ構造化微粒子の合成に取り組んだ。特に,開発した管状火炎の自発光分光解析,管状火炎燃焼による金属タングステンナノ粒子の合成を実施した。代表的な研究成果を以下に示す。 1) エタノール直接噴霧型管状火炎の自発光分光解析: 液体燃料を軸方向から噴霧した場合の管状火炎の火炎構造を詳細に解析するべく,自発光分光測定を検討した。火炎からの発光をバーナ側面に設置された分光器を用いて分光し,ゲート付きICCDカメラにより撮影を行った結果,総括の当量比が可燃範囲であっても,管状火炎が可燃範囲にない場合,火炎基部が浮き上がることが明らかとなった。一方,管状火炎が可燃範囲にあれば,バーナ基部から安定な火炎が形成可能であることが明らかとなった。 2) 管状火炎燃焼による金属タングステンナノ粒子の合成: 管状火炎特有の火炎構造が,合成した粒子の性状に与える影響を評価するため,燃料過剰条件において金属タングステン粒子の合成を検討した。管状火炎は円形断面を有する層流状の火炎帯であり,均一かつ予測可能な温度・濃度分布の高温ガスが得ることができる。当量比を1以上とすることで,管状火炎バーナから排出される燃焼ガスは極低酸素濃度状態となり,高濃度のCO(2.5%以上)を粒子合成に利用できることが明らかとなった。また,当量比を1以上の管状火炎燃焼を利用することでWOx (x<3)が合成され,キャリアガス流量を減少させて火炎中での滞留時間を増加させることで,粒子のガス化および還元が促進され,ナノサイズの金属タングステン粒子が得られた 上記を含めた研究成果は、解説1報,学会発表10件にて発表した。また,これらの研究の一部は,インドネシアUniversitas Pendidikan Indonesiaと協力して行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画通りとは言えないものの,(1)液体燃料を用いた粒子合成用管状火炎バーナを開発できた点,(2)開発した管状火炎の詳細な火炎構造解析ができた点,(3)開発した管状火炎バーナを用いたナノ構造化微粒子の合成を行い,管状火炎の燃焼特性と得られる粒子の性状を明らかにした点で,現在までの研究進捗状況は「おおむね順調」であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように,昨年度は、研究初年度として、一連の本研究においてもっとも重要な火炎噴霧熱分解装置の新規製作と詳細な火炎構造解析を行った。新しい燃焼方式おいて形成される火炎の構造が明らかとなり合成される粒子との相関を評価できた一方で,粒子の大量合成,粒子構造の最適化,微粒子の性能評価に関しては課題が残った。そこで,2021年度は,火炎合成で得られる微粒子の構造に着目したプロセス・微粒子開発を行う。具体的には, (1)管状火炎燃焼の微粒子合成への利用に関して,微粒子の大量合成に向けた大型装置の製作を開始する。基礎研究用の小型管状火炎バーナで得られた知見を活用し,大量のガス・粒子が処理できるバーナおよび微粒子捕集部の開発を行う。管状火炎は単純な構造であるため,大型化は容易であると考えられる。微粒子の捕集に関して高温ガスを処理できるサイクロン捕集器を開発する。 (2)火炎合成品特有の凝集構造を活用した触媒粒子の開発を行う。様々な発熱量条件で合成を行い,微粒子の凝集構造に与える影響を評価し,その触媒活性を測定する。合成した高結晶ナノ粒子を電子顕微鏡によって観察し,詳細な構造解析を行う。また,粉末の導電性評価を行い,燃焼により生じたナノ粒子の連結構造が,粒子の接触抵抗に与える影響を評価する。 (3)微粒子の耐久性・耐候性向上のために,多成分系の複合化微粒子の作製を行う。原料溶液を超音波霧化や二流体ノズルを用いて液滴化し,火炎場に直接輸送することで,液滴という制限された空間内で原料の反応・粒子の析出を行い,精密に微粒子の構造を制御する。また,微粒子の耐久性を瞬時かつ定量的に評価するための手法も確立する。
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