本研究は、単細胞性藻類であるヒメミカヅキモ(Closterium peracerosum-strigosum-littorale complex)の野生系統を用いて、そのゲノム比較及び発現量比較を行うものである。種内22系統のショートリードシーケンスデータに基づくゲノムサイズ比較により、性に関連しないダイナミックなゲノムサイズ変異の存在が明らかとなった。6系統についてロングリードシーケンスによる詳細な配列比較を行ったところ、ゲノムサイズ変異は性に関連するゲノム領域や繰り返し配列ではなく、ゲノムワイドに見られるコピー数変異に由来することが判明した。そのコピー数変異を招いた大規模な重複は少なくとも種内で4回起きており、そのうち1系統は由来の異なる3つのゲノムがキメラ上に混ざっているゲノムを持つことがわかった。さらにコピー数変異のある遺伝子には機能的な偏りが見られ、特にステージ特異的な発現を示す遺伝子セットにより集中していることがわかった。加えて、30%の遺伝子においては、コピー数変異に比例しない発現量比がみられ、遺伝子量補償が機能していることが示唆されたとともにそれらが翻訳に関わる遺伝子に集中していることが明らかとなった。本研究は、ヒメミカヅキモがゲノムサイズ多型とコピー数変異による影響を解き明かす、新たなモデル生物となることを示した。 これらの成果を、日本進化学会にて主催したシンポジウムにて発表したほか、学術論文としてまとめ、国際誌に投稿中である。
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