研究課題/領域番号 |
20J20891
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
三ヶ木 彩芽 上智大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 細菌認識 / 糖認識 / ボロン酸 / デンドリマー / 分光分析 |
研究実績の概要 |
本研究では、蛍光と凝集作用を持つ分子プローブを新たに設計・合成することで、高感度で選択的な細菌識別法の開発を目指す。分子プローブは、樹状高分子であるデンドリマーの表面に、細菌認識部位としてボロン酸を修飾したナノ分子を基本としている。令和2年度は、ボロン酸修飾デンドリマーに蛍光部位であるダンシル基を追加で導入し、高感度な細菌認識に成功した。 そこで令和3年度は、1) ダンシル修飾型ボロン酸デンドリマーの機能評価、2) ボロン酸デンドリマーが有する細菌認識力のメカニズム解明に取り組んだ。 1)について、令和2年度に引き続きダンシル修飾ボロン酸型デンドリマーの細菌認識機能を評価した。ダンシル基を導入すると認識感度は向上するものの、意図しない分子間相互作用が影響して細菌選択性に劣ることが示された。 2)では1)を踏まえ、静電相互作用と疎水性相互作用の影響を評価した。これら2つの分子間相互作用を強めると、ボロン酸の細菌認識力は強まる一方で細菌選択性は失われることが示された。次に、ターゲット部位を増やすことで細菌認識機能を改善しようと、糖とリン酸をターゲットとしたジトピック型の細菌認識を試みた。リン酸認識部位にはジピコリルアミノ基を採用した。実験の結果、ジトピック型プローブは幅広いpH範囲にてグラム陽性菌選択的な細菌認識に成功し、ボロン酸単体による認識よりも数倍感度が向上した。 これら1)、2)の成果より、静電相互作用や疎水性相互作用の強化はボロン酸の細菌認識力を高めるが細菌選択性は失われること、特定分子に対する認識部位の導入はグラム陽性菌への選択性を保持しながら高感度化を達成出来ることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題について、前年度に続いて蛍光プローブの細菌認識機能を評価することで、分子間相互作用が細菌選択性に影響することが新たに示された。そこで静電相互作用と分子間相互作用を増強したプローブをそれぞれ新たに合成したところ、ボロン酸の細菌認識力は高まるが細菌選択性は劣るという知見を得た。一方でリン酸に対する認識部位を導入すると、グラム陽性菌への選択性を保持しながら幅広いpH条件での高感度な認識に成功した。これら全ての知見は、本研究課題の目的である優れた細菌選択性と高感度化を実現するために不可欠であり、重要な成果である。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度も申請計画に従って、ボロン酸修飾デンドリマーを用いた細菌選択性の評価及び認識メカニズムの解明に取り組む。特に認識ターゲットである細菌表面の糖鎖構造の特定にも注力したい。また、令和4年度は最終年度のため、本研究課題の成果公表を学会発表や論文発表として積極的に行う予定である。
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