研究実績の概要 |
我が国において, うつ病は全ライフステージにおける自殺の主な原因となるだけでなく, 精神疾患による社会的コストは, 年間約2.7兆円に上ると推計されている. 一方で, 近年世界的に増加しているCKD患者では, 20~30%がうつ病を合併しているとされ, 一般的な集団の罹患率(4~8%)に比べ顕著に高いことが示されている. その要因として, CKD発症に伴う血中FGF21濃度の上昇がうつ病発症を誘導している可能性が考えられる. うつ病の発症はCKD患者における死亡リスクを増大させることから, CKD患者におけるうつ病の予防は重要な課題であるが, その方策は確立されていない. 一方で, 定期的な運動は血中FGF21濃度を低下させるとともに, うつ病の予防・改善に有効である可能性が示されている. したがって, CKD患者における定期的な運動は, 血中FGF21濃度の低下を介して抑うつ症状を改善する可能性があるが, これらの関係性については不明である. 本年度の研究では, 筑波大学附属病院または地域情報誌などにて募集したCKD患者175名(推算糸球体濾過量 < 90 mL/min/1.73㎡)を対象として, 血中FGF21濃度および身体活動量の関連性を横断的に検討した. その結果, 年齢や性別, 腎機能などの交絡因子を補正した重回帰分析において, MVPA時間は血中FGF21濃度と独立した負の関連性を示した一方, LPAは血中FGF21濃度と有意な関連性を示さなかった. これらの結果は, CKD患者において, 日常的な中高強度の身体活動は血中FGF21濃度を低下させる可能性を示している.
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