研究課題
葉器官を構成する細胞の数が減少した場合、それを相補するかのように葉肉細胞が顕著に肥大する「補償作用」という現象が知られている。この現象は、未だに解明されていない「葉面積制御機構」の解明に資すると期待されている現象である。植物の葉は主な可食部となるため、その面積制御機構の解明は、基本的な生命現象の理解だけでなく、農学的な観点から社会活動にまで波及的な効果を及ぼすと期待できる。そこで本課題では、典型的な補償作用を示すfugu5変異体を用いて、当該現象の分子メカニズム解明に取り組み、葉を構成する細胞数と細胞サイズの協調を担う鍵因子群を同定することを目指した。昨年度はfugu5の子葉における三次元相関代謝ネットワークを構築することで、大規模時系列代謝データを整理し、fugu5の補償的細胞肥大に関与すると考えられる代謝産物の候補を複数見出した。その結果を受け、今年度は、同定された複数の鍵代謝産物候補がどのように葉面積制御に資するのかを解明するため、トランスクリプトーム解析に着手した。得られたデータを昨年度までに得られたメタボロームデータと統合し、時系列大規模マルチオミクス解析を行ったところ、アブラナ科に特徴的なインドールグルコシノレートがfugu5において顕著に合成・分解されていることを見出した。また、その分解代謝系を遺伝子発現データより整理すると、分解産物は代謝的再利用を受け、オーキシンへと変換されていることが示唆された。実際に、当該代謝産物を蓄積させた場合、fugu5の細胞サイズは顕著に肥大した。よって、本研究課題によって得られた一連のデータより、植物の生体防御に資すると報告されているインドールグルコシノレートとその分解経路が、葉面積制御にも重要な働きをもつ「機能性代謝産物」であることを特定し、葉面積制御機構に資する鍵因子群の推定に資する成果を得ることができた。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件)
Frontiers in Plant Science
巻: 13 ページ: -
10.3389/fpls.2022.1024945
巻: 14 ページ: -
10.3389/fpls.2023.1031426
10.3389/fpls.2022.945225
Quantitative Plant Biology
巻: 3 ページ: -
10.1017/qpb.2022.19