研究課題/領域番号 |
20J20906
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
市原 知哉 九州大学, 医学系学府, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
|
キーワード | ユビキチン / 鉄代謝 / FBXL5 |
研究実績の概要 |
本研究は、FBXL5を分解制御する因子を同定することを目的とする。予備的実験においてFBXL5の分解を蛍光でモニターできるレポーター細胞を作製した。CRISPR/Cas9システムを用いたゲノムワイドスクリーニングをおこなうために、レンチウイルスを用いてsgRNA (single guide RNA)ライブラリーを蛍光レポーター細胞に導入した。ライブラリー導入細胞の中で鉄欠乏条件下において蛍光が安定化している細胞集団をセルソーターで回収し、次世代シークエンスにより回収後の細胞に濃縮されたsgRNA配列を探索した。しかしながら、今回の解析では統計学的に有意に回収後の細胞に濃縮されたsgRNA配列を同定することができなかった。この原因として、ウイルスの導入効率の問題、次世代シークエンスのライブラリー調製の問題、目的細胞集団の選択戦略の問題が考えられる。特に、今回は目的細胞集団を蛍光を指標に選択したが、さらに薬剤選択レポーターを導入することで目的細胞集団を効率よく濃縮できると考えられる。これらの点を踏まえ、遺伝学的スクリーニングの手法を再検討している。 遺伝学的スクリーニングが順調に進行しなかった場合に備え、生化学的手法によるスクリーニングも並行しておこなった。FBXL5の野生型鉄結合ドメインまたはデグロンを欠損した変異型鉄結合ドメインを過剰発現した細胞を用いてIP-MSをおこない、野生型鉄結合ドメインに特異的に結合するユビキチンリガーゼを複数同定した。これらのユビキチンリガーゼがFBXL5の分解に寄与しているかを検証したところ、一部のユビキチンリガーゼのノックダウンによりFBXL5の安定性が増加するという予備的データを得た。現在、この結果の再現性を確認している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝学的スクリーニングを実施してFBXL5の分解制御に関わる候補因子を得ることが初年度の研究計画であったが、これについては想定通りの結果を得ることができなかった。一方で、並行して実施していたIP-MSによりFBXL5の分解制御因子の候補を得た。研究計画通りとは行かなかったものの、次年度に繋がる成果を十分に得られたと言える。
|
今後の研究の推進方策 |
IP-MSで得られた候補因子について、検証実験を進めていく。生化学的実験によりFBXL5の分解制御への関与が確認できれば、生体の鉄代謝制御における当該因子の役割についても検討する。
|