本研究は、FBXL5を分解制御する因子を同定することを目的とする。予備的実験においてFBXL5の分解を蛍光でモニターできるレポーター細胞を作製した。CRISPR/Cas9システムを用いたゲノムワイドスクリーニングをおこなうために、レンチウイルスを用いてsgRNA (single guide RNA)ライブラリーを蛍光レポーター細胞に導入した。ライブラリー導入細胞の中で鉄欠乏条件下において蛍光が安定化している細胞集団をセルソーターで回収し、次世代シークエンサー解析により回収後の細胞に濃縮されたsgRNA配列を探索した。しかしながら、回収できた蛍光安定化細胞はごく少数であったため、今回の解析では統計学的に有意に回収後の細胞に濃縮されたsgRNA配列を同定することが出来なかった。 並行して、生化学的手法によるスクリーニングをおこなった。FBXL5の野生型鉄結合ドメインまたはデグロンを欠損した変異型鉄結合ドメインを過剰発現した細胞を用いてIP-MSをおこない、野生型鉄結合ドメインに特異的に結合するユビキチンリガーゼを複数同定した。しかし、これらの候補因子を個別にノックダウンしてもFBXL5の安定化を確認することが出来なかった。この結果は、FBXL5の分解制御に複数のユビキチンリガーゼが関与している可能性を示唆しており、さらに文献情報を踏まえると、ある一群のユビキチンリガーゼが協調的にFBXL5を分解制御しているという仮説が考えられる。
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