研究課題
我々は,CVD/ALD法における反応動力学現象の理解を通じて,その表面反応機構の解明を目的としている.本年度は,BCl3およびNH3を用いてBNを成膜するALDプロセスにおける成膜機構の解明に向けて,密度汎関数(DFT)法および反応性力場分子動力学法(ReaxFF MD法)による数値シミュレーションを行った.まず,ALDプロセスに含まれる基本的な表面反応機構をDFT法によって推定した.(a) OH終端Si(100)表面でのBCl3反応,(b) Cl終端Si(100)表面でのNH3反応,(c) NH終端BN表面でのBCl3反応,(d) Cl終端BN表面でのNH3反応の合計4つの反応について気体分子の物理吸着から副生成物の脱離に至るまでのエネルギーダイアグラムを求めた.その結果,反応 (c) が反応全体の中で最も高い活性化エネルギーを示し,BCl3系でのALDウィンドウの下限を律速している重要な反応であることが明らかとなった.この反応 (c) の活性化エネルギーの値は,これまでの理論および実験による先行研究と良い一致を示した.次に,BCl3およびNH3を用いてBN薄膜を成膜するALDプロセスにおいて基板温度が動力学と化学反応の両方を同時に含む表面反応機構および成膜機構に及ぼす影響を理解するためにReaxFF MDシミュレーションを実施した.DFT法で求めたデータに対して,ReaxFFに含まれる各種パラメータを最適化することで力場開発を行った.新たに開発された力場を用いて,表面に対してBCl3およびNH3を連続的に入射することで成膜シミュレーションを行った.BNは成膜初期においては3次元的なクラスター成長と2次元的な成長が混合していることが示唆された.このような初期成膜機構は,熱運動によって気体分子が表面拡散する現象を考慮することで初めて明らかとなった.
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 備考 (3件)
Computational Materials Science
巻: 217 ページ: 111919~111919
10.1016/j.commatsci.2022.111919
https://researchmap.jp/uenenaoya
https://scholar.google.com/citations?user=j0e0issAAAAJ&hl=en
https://www.researchgate.net/profile/Naoya-Uene