研究課題/領域番号 |
20J20954
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中井 彬人 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 環拡張ポルフィリン / ヘキサフィリン / 縮環ポルフィリノイド / オクタフィリン / 芳香族性 |
研究実績の概要 |
これまでヘキサフィリンPd錯体からトリプルデッカー型のπ-Ru錯体を合成報告していた(A. Nakai, A. Osuka et al. Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58, 8197.)が、今回新たなπ錯体の合成に成功し、その物性を評価した。興味深いことにトリプルデッカー錯体はTBAHによる酸化を行うとRuユニットが外れることが、π錯体を合成する際に大気下で水を添加することでRuとβ-炭素の間に酸素が挿入したπ錯体が生成することが明らかとなり、それらの結果をもとに芳香族性とπ錯化の影響を評価した。 また、柔軟な構造を有する環拡張ポルフィリンは特定の配位形式を必要とする金属錯化に伴いその骨格が変化するだけでなく、転位反応がおこる場合が存在することが知られている。今回、N縮環ペンタフィリンがPd錯化に伴い、メゾ位の炭素が転位を起こし、α位が直接結合したN-縮環サフィリンPd錯体が得られることを明らかにした。さらに酸化によりヘテロに繋がった二量体を与えることがわかった。物性を比較しただけでなく、2つの過程の反応機構を詳しく考察した。 さらには今回初のメゾフリーオクタフィリンとしてテトラブロモ[36]オクタフィリンを合成した。そしてZn錯化すると5位と25位が分子内で架橋された縮環ポルフィリン(2.1.1.1)二量体Zn錯体を与える一方で、Ni錯化を行うと渡環反応によりN混乱ポルフィリンテープNi錯体へと変化することを明らかにした。Zn錯体は36πメビウス芳香族性を示す一方でNi錯体は36π反芳香族性を示した。さらには、Ni錯体は酸化することで34π芳香族性を示すようになり、酸化還元挙動を示すことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
オクタフィリンから分子内渡環反応を用いた新規縮環ポルフィリノイドの合成に関する研究テーマにおいては、従来のカップリングと酸化的縮環では合成できなかった2種類の縮環ポルフィリノイドの合成に成功している。その上、当初の予定通り、新規ヘキサフィリンπ錯体を合成し、その論文(Molecules 2020, 25, 2753.)が受理された。そればかりか、N-縮環[22]ペンタフィリンがパラジウム錯化に伴い、骨格変化をおこし2種類のN-縮環サフィリンPd錯体が得られることを発見し、論文が受理された(Chem. Commun. in press)。さらに今年度のみで筆頭著者の論文2報を含めた計4報もの論文が国際論文誌に受理されている。よって、研究は大幅に期待以上の研究の進展があったといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後はさらなる縮環環拡張ポルフィリンの合成を検討する。当初の予定通りヘキサフィリン三重縮環体の合成を試みるが、上手くいかない際は合成経路だけでなく、分子骨格等も柔軟に変更し、世界初のメビウス芳香族性を有する縮環ポルフィリノイドの合成に取り組みたい。
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