電気化学反応を始めとする界面化学反応の更なる制御のためには、分子の構造や運動などの状態制御を含めた反応設計が重要とされる。過年度の実験からは光圧作用場では分子運動が変調され分子状態が変化することを見出した。これを踏まえた本年度の研究では光圧作用場での分子操作の可能性を模索し、プラズモン共鳴により局所化した光局在場での分子構造の把握、そして分子共鳴状態形成による反応性の変化を確認することを目的とした。2020年度、2021年度において最適化された表面増強ラマン散乱分光法を使い、電極界面の水分子をターゲットとした電気化学反応中のin-situ分光観測を行うと同時に、ビデオ画像の自動解析による水素発生反応量の定量化に着手した。 気体発生反応下でも顕微測定が可能な静水圧系での電気化学分光測定系を最適化し、種々の金属構造での水素発生反応の観測に成功した。本年度ではナノ構造体を電極上に作成し、これらの原子間力顕微鏡や走査型電子顕微鏡による表面評価、消光や散乱による分光学的評価、更に時間領域差分法による電場シミュレーション評価を行った。 プラズモン活性な電極では、負電位領域における水素発生に関与する水分子が電気化学電位に応じて異なるスペクトル形状を与えることを検証したほか、重水と軽水を混合した系でのカチオン依存性等の実験において水和構造が与える影響を解明することに成功し、電極界面の水分子反応素過程の変調が起こることを明らかとした。これらの知見を集約し、リソグラフィー法によってナノ構造体を周期的に配列した際には、高過電圧・高圧力下での泡の発生量が構造に依存して変化することを見出し、光圧作用場でのナノ構造による電気化学反応極限制御に新たな指針を提唱することに成功した。
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