研究実績の概要 |
令和3年度は、生体組織に対して短時間に高い接着性を有する組織接着性メッシュの調製を目的として、研究を行った。前年度の研究課題として、水中におけるメッシュの低い組織接着性が明らかとなった。本課題を改善するために、メッシュの膨潤度に着目し、低い膨潤性を有するメッシュの作製を行い、生体組織に対する耐圧強度試験を行った。本年度では、メッシュの主材料であるスケトウダラ由来ゼラチン(タラゼラチン(ApGltn))の分子量を40,000 g/mol(ApGltn40)から93,446 g/mol(ApGltn93)に変化させ、メッシュを作製した。具体的にApGltn93の一部に炭素鎖長10のデシル基(C10)を修飾した高分子量疎水化タラゼラチン(C10-ApGltn93)を合成し、エレクトロスピニング法によってメッシュ状に成形した。作製したメッシュの生理食塩水中における膨潤度を測定した結果、C10-ApGltn93メッシュは、C10-ApGltn40メッシュと比較し、低い膨潤度であることが確認された。C10-ApGltn93メッシュを用いてブタ大腸漿膜組織に対する耐圧強度試験を行った結果、C10-ApGltn93メッシュは、疎水基を修飾していないオリジナル(Org)ApGltn93(Org-ApGltn93)メッシュと比較し、組織接着性の向上は確認されなかった。この結果の理由として、メッシュの低い吸水性、修飾したC10の凝集が考えられた。次に、C10-ApGltn93メッシュの吸水性の向上およびC10の凝集を防ぐ目的として、α-シクロデキストリン(α-CD)を添加し、メッシュを作製した。作製したα-CD添加C10-ApGltn93メッシュを用いてブタ大腸漿膜組織に対する耐圧強度試験を行った結果、Org-ApGltn93メッシュと比較し、組織接着性の向上は確認されなかった。
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