研究課題/領域番号 |
20J20997
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
高宮 渉吾 同志社大学, 脳科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 海馬 / 学習と記憶 / 聴覚皮質 / 電気生理学 / 行動課題 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、多細胞同時記録と光遺伝学的制御を用いて、記憶の形成と固定化、想起の際に、海馬と側頭皮質のニューロン活動がいつどのように変化し、記憶の実体であるメモリーエングラムの形成にどのように関与するのかを明らかにすることである。 そのためにまず、ラットに行わせる記憶課題を確立した。この課題では、ラットが鼻を入れるポートと報酬(餌)の出るマガジン、音刺激を提示するためのスピーカーが設置されたオペラントボックスを用いた。ラットは提示された音が高音であればポート A、低音であればポート B に鼻を入れると報酬を得ることができ、音の種類(高音と低音)とポートの場所(A と B)を連合し学習した。この記憶課題遂行中のラットの海馬 CA1 からテトロードを用いてニューロン活動を記録した。ニューロン活動の解析を行った結果、海馬CA1 において、特定のポートを選択し、報酬を得たときにのみ発火頻度を上昇させるニューロンがいくつか確認された。このニューロンは学習中に多く存在し、学習完了後はその割合が減少することが分かった。このことから、このニューロンは学習の進行に重要である正の強化子としての役割を持つことが示唆され、海馬 CA1 ニューロンは記憶形成時に特に重要な役割をもつことが示唆された。これらの結果をまとめた論文を国際誌に投稿し受理された。 また、上記の課題遂行中のラットの聴覚皮質からニューロン活動を記録した。その結果、特定の音に対して発火頻度を上昇させるニューロンが確認された。さらに、特定のポートを選択し、報酬を得たときにのみ発火頻度を上昇させるニューロンも確認された。そしてこれらの課題特異的な活動を示すニューロンの割合が学習に伴って増加することが分かった。この結果をまとめた論文を現在、国際誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、おおむね計画通りに研究が進展した。海馬CA1ニューロン活動についての論文を国際誌に投稿し受理された。また、聴覚皮質におけるニューロン活動を記録・解析し、データをまとめて論文を執筆・投稿した。現在レビジョン中である。 電気生理学的手法を用いた実験は順調に進展しているが、光遺伝学を用いた神経細胞活動の制御実験はあまり進展していない。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、光遺伝学を用いた神経細胞活動の制御実験を精力的に行っていく。まず、光制御装置(光遺伝学レーザー等)を購入し、装置のセットアップを行う。これまで記録系として活用していた実験系に光制御機構を搭載し、これらに必要な消耗品費を拡充する。また、ウイルスベクターを用いて海馬-側頭皮質回路にアーキロドプシンを正確に発現させる手法を確立する。そして光制御用のラットとコントロール条件用のラットを用いて、光制御による行動変化のデータを収集し解析する。
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