研究課題/領域番号 |
20J21121
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
長谷川 葉月 東京工業大学, 生命理工学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | シアノバクテリア / 高温耐性 / 熱ショック応答 / tRNA |
研究実績の概要 |
前年度、シアノバクテリア の一種Synechococcus elongatus PCC 7942において、概日リズムのレギュレーターであるRpaAと高温耐性について研究を行い、RpaAが光合成活性を制御し、結果として温度依存的増殖を調節している可能性が示唆された。しかし、その後の研究により、本研究でコントロールとして用いた株(以下H1)が著しい高温感受性となっていたため、相対的にrpaA変異株が高温での増殖が促進されているように見えていることが判明した。そこで、H1株の高温感受性の原因特定を試みた。他研究室より高温感受性を示さないSynechococcus elongatus PCC 7942株(以下WT)を分与していただき、WTを用いてH1株に対して2回の戻し交配を行うとともに、半年間H1株を高温下で継代培養することで、高温耐性が回復した株を得た。H1株及びこれらのH1株を親株として高温耐性が回復した株に対して全ゲノム解析を行った。その結果、tRNA-Leu(CAA)をコードするsynpcc7942_R0040 の1塩基変異が高温感受性の原因であると特定した。この一塩基置換によって、tRNA-Leu(CAA)のt-armが5塩基対から4塩基対に減少していることが二次構造予測によって示唆された。さらにH1株から得られた高温非感受性株(サプレッサー株)のゲノム解析から、機能未知タンパク質をコードするsynpcc7942_1640の変異を特定した。Synpcc7942_1640のもつNYNドメインはtRNAやrRNAの分解に関わることが示唆された。以上のことから、tRNA-Leuの高温下での安定性にt-armの構造が重要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
高温耐性に関する研究を行なっていたにも関わらず、コントロール株(H1)が遺伝子変異によって高温感受性を示すようになっていたことに研究の途上で気づいたため、当初の研究計画よりやや遅れてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
株の維持・管理を徹底することで、研究に用いている株に予期せぬ変異が生じないよう努める。また、変異株を作出する際は必ず2株以上を保存・実験に用いることで、再現性の確認を行う。
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