研究実績の概要 |
先行研究により、シアノバクテリア の一種Synechococcus elongatus PCC 7942 (以下S. elongatus)において二成分制御系 Hik2-Rre1 経路依存的な熱ショック応答転写は、熱ショック応答において新たに合成されるタンパク質によって抑制されることで、一過的であることが示唆されていたが、熱ショック応答抑制因子は未同定であった。大腸菌などでは、Hsp70型シャペロン(DnaK)が熱ショック応答の負の制御因子として知られていることから、S. elongatus における大腸菌DnaKオルソログであり、Rre1制御下遺伝子でもあるシャペロンの1種に着目した。その結果、このdnaKオルソログを過剰発現させると、熱ショックを含むHik2-Rre1経路の活性化が抑制されることがわかった。したがって、このdnaKオルソログはHik2-Rre1経路活性化全般に抑制的に作用することが示唆された。その他のシャペロンを過剰発現してもHik2-Rre1経路の活性化は抑制されなかった。さらにin silico解析により、Hik2とこのDnaKオルソログの相互作用が示唆された。したがって、S. elongatusにおいて、このDnaKオルソログは、Hik2との相互作用を介して、Hik2-Rre1依存性転写の特異的な負のフィードバック制御因子であると考えられ、現在本研究成果について論文投稿中である。また、昨年度明らかにしたS. elongatusにおけるtRNAの安定性と高温耐性について論文を発表した(Hasegawa et al., 2023)。
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