研究実績の概要 |
昨年度、18:0/22:6-PAはSYNJ1と結合してD4-ホスファターゼ活性を亢進することを報告した。そこで、今年度はSYNJ1と18:0/22:6-PAとの機能連関を細胞レベルで明らかにすることを目指した。まず、脳において18:0/22:6-PAを産生するDGKδとSYNJ1の神経細胞内局在を調べた。その結果、SYNJ1はDGKδが細胞質で形成する顆粒と強く共局在した。従って、SYNJ1はDGKδが産生する18:0/22:6-PAと細胞内で近接している可能性がある。今後は、神経細胞においてDGKδが産生する18:0/22:6-PAがSYNJ1のD4-ホスファターゼ活性を亢進するかを明らかにする。具体的には、SYNJ1が産生するPIPsをLC-MS/MSまたはPIPs抗体を用いて定量・検出し、細胞内SYNJ1活性を評価する。 次に、クラスリンと相互作用してエンドサイトーシスを制御するAP180と18:0/22:6-PAとの相互作用について調べた。その結果、AP180は調べたリン脂質のうち、PAとPI(4,5)P2のみに強く結合した。さらに、AP180はPA分子種のうち、18:0/22:6-PAに最も強く結合した。エンドサイトーシスの制御において、AP180とクラスリンの相互作用が重要である。そこで、18:0/22:6-PAまたはPI(4,5)P2がAP180とクラスリンとの相互作用に影響するかを検証した。その結果、18:0/22:6-PAはAP180とクラスリンとの相互作用を阻害し、PI(4,5)P2は上記阻害効果を示さなかった。 以上より、18:0/22:6-PAはAP180とクラスリンとの相互作用における負の調節因子として機能することがわかった。今後は、18:0/22:6-PAがAP180を標的にして、細胞レベルでエンドサートーシスが制御されるかについて明らかにする。
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