研究課題/領域番号 |
20J21185
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
小松 瑞果 神戸大学, システム情報学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 微分代数 / モデリング / ソフトロボット / Morphological computing / ベイズ推定 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,時系列データを用いて,その背後にある系のダイナミクスの予測などを可能とする,微分代数に基づくモデリング手法の構築である.本研究では,入出力つきの状態空間モデルで表すことができる現象を対象とする.本研究の基礎は,モデルに対する微分・代数演算により,モデルの状態変数を消去することであり,このように得られた方程式を入出力関係式とよぶ. 本年度の主な研究実績の一つは,ソフトロボットの構成要素となる柔らかい物体に関する理論解析手法の構築である.ソフトロボットは,従来のロボットと異なり,安全な動作が可能であると言われている.しかし,実際にはその扱いは容易ではなく,柔らかさは制御を妨げる要因とみなされることが多い.一方,柔らかさを積極的に利用しようとする研究の流れもある.このような考えに基づく概念としてmorphological computingが挙げられる.本研究では,morphological computingの理論解析として,入出力関係式に基づく代数的手法を提案した.これにより,柔らかい物体のダイナミクスを陽に記述することが可能となり,エコーステート性などの性質の解析や,制御が可能となった. 二つ目の研究実績は,同定不可能モデルに対するパラメータ推定手法を,確率的枠組みに発展させたことである.同定不可能とは,ここでは,与えられたデータからモデルパラメータが一意に定まらないことを指す.同定不可能モデルに対して通常のパラメータ推定を適用すると,データから得られる情報を見落としてしまう可能性がある.これを解決すべく,筆者は,観測誤差がないという仮定のもとで,同定不可能モデルに適合するパラメータを網羅的に求める手法を構築してきた.本年度は,これを確率的な枠組みに拡張し,ベイズ推定を導入した.これにより,同定不可能性を考慮した,モデルパラメータのベイズ推定が可能となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始当初の計画では,2020年度に,データから入出力関係式を学習する方法の構築に取り組む予定であった.また,2021年度には,入出力関係式を制御等に応用する予定であった.しかし,ある程度小さな規模のモデルについては,計算代数に基づく手法で入出力関係式が導出可能であったために,入出力関係式の学習と応用の順序を変えて取り組むことにした.具体的には,2020年度は,入出力関係式を用いたソフトロボットの理論解析や,入出力関係式に基づく同定不可能モデルに対するベイズ的パラメータ推定手法の構築などの応用に取り組んだ.取り組む順番は計画当初から変更したものの,2021年度に実施予定だった内容に取り組み,特に,ソフトロボットの理論解析については論文が受理されたことなどから,研究は概ね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は2020年度に実施予定であった,入出力関係式の学習方法の構築に取り組みたい.研究開始当初は,パラメータ推定によって得られたパラメータの候補をデータとみなし,データが満たす代数方程式を学習する予定であった.しかし,この手順では,パラメータ推定と学習が分離しており,実務的な意味で望ましくないと考えられる.そこで計画を修正し,学習とパラメータ推定が一連の手順に含まれるような手法の構築を検討したい.
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