研究課題/領域番号 |
20J21190
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
海渡 智史 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | CRISPR-Cas9 / DNAメチル化阻害剤 |
研究実績の概要 |
ポリコーム群複合体関連遺伝子の中で、特にEZH2の機能喪失型変異に対する合成致死誘導遺伝子の探索を目的としてCRISPR-Cas9スクリーニングを行ったが、候補遺伝子が少なく、またそのsgRNAのリード数の変化も限定的であった。一方で、骨髄性血液腫瘍に対して使用されるDNAメチル化阻害剤を併用したスクリーニングにおいては、薬剤の存在下と非存在下におけるsgRNAのリード数に変化が見られ、薬剤耐性機序に関わる候補遺伝子を複数同定した。DNAメチル化阻害剤は副作用が比較的少なく、合併症を有する患者や高齢者に対しても投与がしやすく、実臨床で多くの症例に対して使用されている。そのため当初計画していたポリコーム群複合体関連遺伝子の変異に対する治療戦略よりも応用範囲が広いと考え、DNAメチル化阻害剤の耐性機序に関わる候補遺伝子の解析を優先して研究を進めている。DNAメチル化阻害剤の存在下でのCRISPR-Cas9スクリーニングにおいて、いくつかの候補遺伝子の機能喪失が薬剤感受性を増大させることを見出した。そのうち遺伝子Xは、MOLM-13とMDS-Lの2つの細胞株を使用したスクリーニングで共通して見出され、DNAメチル化阻害剤の耐性機序に関わる可能性が高いと考えられたため、この遺伝子の機能に関して詳細な解析を進めている。遺伝子XはユビキチンリガーゼE3としての機能を有していることが報告されており、その基質の同定が薬剤作用機序の解明に際して重要と思われた。そこでユビキチン化タンパク質を濃縮し質量分析を行い、遺伝子Xのユビキチン化の基質同定を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ポリコーム群複合体関連遺伝子の中で、特にEZH2の機能喪失型変異に対する合成致死誘導遺伝子の探索を目的としてCRISPR-Cas9スクリーニングを行ったが、候補遺伝子が少なく、またそのsgRNAのリード数の変化も限定的であった。一方で、骨髄性血液腫瘍に対して使用されるDNAメチル化阻害剤を併用したスクリーニングにおいては、薬剤の存在下と非存在下におけるsgRNAのリード数に変化が見られ、薬剤耐性機序に関わる候補遺伝子を複数同定した。DNAメチル化阻害剤は副作用が比較的少なく、合併症を有する患者や高齢者に対しても投与がしやすく、実臨床で多くの症例に対して使用されている。そのため当初計画していたポリコーム群複合体関連遺伝子の変異に対する治療戦略よりも応用範囲が広いと考え、DNAメチル化阻害剤の耐性機序に関わる候補遺伝子の解析を優先して研究を進めた。DNAメチル化阻害剤の存在下でのCRISPR-Cas9スクリーニングにおいて、いくつかの候補遺伝子のノックアウトが薬剤感受性を増大させることを見出し、個別に設計したsgRNAによるノックアウトでも同様の表現型が確認された。
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今後の研究の推進方策 |
複数の候補遺伝子のうち、特に遺伝子XはユビキチンリガーゼE3としての機能を有していることが報告されており、その基質の同定が薬剤作用機序の解明に際して重要と思われた。今後はMOLM-13とMDS-Lの細胞株において、DNAメチル化阻害剤への暴露後に、ユビキチン化タンパク質を濃縮し質量分析を行い、野生株と遺伝子Xの変異株のプロファイルを比較することでユビキチン化の基質同定を進めていく予定である。また、DNAメチル化阻害剤の作用機序の観点からもいくつかの基質を候補として考えている。ウエスタンブロット法により、基質候補のタンパク質発現レベルの違いを確認し、特に発現レベルの大きく異なる基質候補に関してはそれらの強制発現により薬剤抵抗性が回復するかを検討する予定である。
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