固相担持アリールヨードニウムイリドを用いて求核的アスタチン-211(211At)標識反応の検討を行った。固相担持アリールヨードニウムイリドの反応性は、補助基の構造だけでなく樹脂の性質にも依存すると考え、架橋鎖や疎水性・親水性の異なる樹脂に担持された固相担持アリールヨードニウムイリドの合成を行った。合成した固相担持アリールヨードニウムイリドを用いて、液相条件の最適条件に倣い211At反応を行ったところ、ポリスチレン樹脂に担持されたアリールヨードニウムイリドを用いた際に良好な放射化学収率で211At標識体を得ることができた。 これまで固相担持ヨードニウムイリドの合成は事前に調製した超原子価ヨウ素試薬を用いて行っていた。そこで筆者が開発したIodine tris(trifluoroacetate)とアリールゲルマン・スタナンを用いた、イプソ位置換反応による超原子価ヨウ素の系中発生法を用いてワンポット合成を試みたところ、事前に調製した場合と遜色ない収率で固相担持ヨードニウムイリドを合成することができた。本手法の確立により、より多様な211At標識前駆体の供給が可能になると期待される。 標識反応の検討と並行して、固相担持ヨードニウムイリドの安定性を調査した。非担持型のヨードニウムイリドは室温下3日程度で分解が進行した一方、固相担持ヨードニウムイリドはほとんど分解が確認されなかった。固相樹脂に担持することでヨードニウムイリドの安定性が向上するとの当初の仮説を支持する結果であり、臨床現場での長期保存の可能性が示唆された。
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