研究課題/領域番号 |
20J21204
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
益村 晃司 広島大学, 統合生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 酵母 / メチオニン代謝 / 寿命制御 / トランスポーター / 液胞 |
研究実績の概要 |
本研究では出芽酵母のメチオニン代謝が関わる寿命制御機構の解明を目的とし、メチオニンの代謝産物S-アデノシルメチオニン(SAM)とS-アデノシルホモシステイン(SAH)を高蓄積する①SSG1変異株および②SAH水解酵素SAH1の変異株を取得し解析を行った. ①SSG1変異株ではSAMおよびSAHの高蓄積や寿命延長が観察され、Ssg1タンパク質の液胞膜への局在、多剤排出トランスポーター(MATE family)と相同な膜貫通ドメインを有していた。これらのことから、Ssg1タンパク質は液胞膜でSAM/SAHの濃度調節に関わっていることが予想された。そこで、細胞を細胞質と液胞に分画しそれぞれのSAM/SAH量を測定したところ、SSG1変異株は液胞にSAM/SAHを高蓄積していた。さらに、細胞内では通常合成されないSAMの構造アナログS-アデノシルエチオニン(SAE)を外部から添加しても、SSG1はSAEを液胞に高蓄積した。したがって、Ssg1タンパク質はSAM/SAHを液胞に輸送・蓄積するトランスポーターであることが強く示唆された。 ②SAH水解酵素SAH1の変異株を用いた解析において、SAH1の279番目のトレオニンがイソロイシンに変異したsah1-1変異株はSAM/SAHの高蓄積のほか増殖遅延および短命を示す。sah1-1変異株の増殖遅延の抑圧スクリーニングから取得された2種類の復帰変異株は、SAH1に新たなアミノ酸変異が入ることでsah1-1変異株の増殖遅延を抑圧し寿命も延長していた。これより、SAH水解酵素の活性もSAMやSAHの蓄積を介して寿命制御に関わることが予想された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SSG1は液胞にメチオニンの代謝産物であるSAM/SAHを輸送するトランスポーターであることを予想していた。SSG1がSAMやSAH、SAMの構造アナログであり生体内では合成されないSAEも液胞に高蓄積していたことから、当初の予想通りSSG1がトランスポーターであることが示唆され、計画通り研究が進展している。 SAH水解酵素SAH1の変異株を用いた解析では、sah1-1の復帰変異株が寿命延長を示すなど、SAH1の酵素活性が寿命制御に関わることが予想され、SAH1酵素活性と寿命制御の関連性に着目している。
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今後の研究の推進方策 |
SSG1について、in vivoでの液胞へのSAM/SAHの高蓄積が観察されたことから、今後酵母細胞の液胞膜を精製し、SAEや同位体ラベル化したSAM/SAHの取り込み活性試験を行うことでSsg1タンパク質がトランスポーターであることを同定する。 SAH水解酵素SAH1の変異株を用いた解析では、SAH1の酵素活性測定およびSAH阻害剤を用いて、SAH1酵素活性と寿命制御に関連があるか明らかにする。
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