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2020 年度 実績報告書

生理学的薬物動態モデリング手法による化学物質リスク評価のためのヒト体内動態予測

研究課題

研究課題/領域番号 20J21210
研究機関昭和薬科大学

研究代表者

三浦 智徳  昭和薬科大学, 大学院薬学研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2020-04-24 – 2023-03-31
キーワードブロモベンゼン / ヒト肝細胞移植マウス / 生理学的薬物動態モデル / ヒトアルブミン mRNA
研究実績の概要

本研究では一般化学物質ブロモベンゼン類に着目し、簡易生理学的薬物動態(PBPK)モデリング手法およびヒト肝細胞移植マウスを活用し、一般化学物質リスク評価のための動物臓器内濃度を予測することを目的とした。
ヒト肝細胞移植マウスにブロモベンゼンおよび1,4-ジブロモベンゼンを経口投与した際の血漿試料を分離分析し血漿中濃度を測定した。ブロモベンゼンはヒト肝細胞移植マウス血漿中で速やかに代謝される一方、1,4-ジブロモベンゼンは投与24時間後もヒト肝細胞移植マウス血漿中の消失が少ないことが認められ、臭素置換基の差異により体内動態が異なることが示唆された。これら異なる実測血漿中濃度を基に動物PBPKモデル用パラメータ値を算出した。仮想投与による両化学物質の肝臓中予測濃度推移は血漿中予測濃度推移と比較して約10倍高値を示した。これらの肝臓中予測濃度を検証するために、両化学物質投与2時間後のヒト肝細胞移植マウスの肝臓を摘出し、両化学物質の肝臓中濃度を実測した。両化学物質投与後のヒト肝細胞移植マウスの肝臓中実測濃度は、動物PBPKモデルを用いて予測した肝臓中濃度とおおむね一致した。血中濃度推移を基にした動物PBPKモデルは、ヒト肝細胞移植マウスの肝臓中濃度を再現することが可能であることが示唆された。ブロモベンゼン投与後のヒト肝細胞移植マウス血中のヒトアルブミンmRNA濃度は高値であった一方、1,4-ジブロモベンゼン投与後のヒトアルブミンmRNA濃度は低値であった。ブロモベンゼンはパラ位置換基がなく、エポキシ体生成による肝臓毒性の可能性が高いことが推察された。
以上、簡易PBPKモデリング手法およびヒト肝細胞移植マウスを活用した本研究の成果は、一般化学物質の血中濃度だけでなく臓器内濃度を予測することが可能であり、ヒト体内動態を考慮した肝臓毒性リスク評価の重要な基盤情報となることが期待される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

DC1 採択一年目が始まると同時に、新型肺炎感染対策のため、東京都下の本私立薬科大学では実験研究への大いなる制約が発生した。しかしながら、実験研究を補う計算科学と、最小限の実験化学手法をうまく組み合わせることで、当初の計画通りに研究に取り組み、計画通りの研究成果を上げることができたと自ら評価している。
これらの予定通りの研究成果は、米国化学会が発行する Chemical Research in Toxicology 誌に自らが筆頭著者として発表することができた。
以上、総合的に判断し、現在までの研究進捗状況はおおむね順調に進展していると評価する。

今後の研究の推進方策

肝臓または腎臓毒性が懸念されるアニリンおよび置換基の異なる2,3-,2,4-,2,5-,2,6-,3,4-および3,5-ジメチルアニリン等に着目する。これらのアニリンおよびアニリン誘導体を用いて、ラットおよびヒト肝移植マウス等の実験動物への単回経口投与実験を行う。各動物の血漿試料を採取し、血漿中化学物質濃度をHPLCを用いて分離分析を行う。得られた実測血漿中濃度推移および一般化学物質の物性値を基に、動物PKパラメータ値を算出する。簡易生理学的薬物動態(PBPK)モデルを活用し、アニリン誘導体の血中濃度の予測値を出力し、実測値との比較検討を行う。
動物およびヒト肝ミクロゾーム等を酵素源としたアニリン誘導体のin vitro代謝消失速度を算出し、代謝速度の種差を調査する。これら動物とヒトとの代謝消失速度の種差および体重の種差を考慮し、肝臓の違いを考慮したヒトPKパラメータ値を外挿する。外挿したヒトPKパラメータ値および簡易PBPKモデルを活用し、アニリン誘導体の仮想投与によるヒト血中、肝臓中および腎臓中濃度推移を出力する。アニリン誘導体のヒトPBPKモデルを活用し、ヒトの血漿中もしくは尿中バイオモニタリング報告濃度から経口曝露量を逆向きに推定し、耐容一日摂取量等の毒性指標値等と比較することにより、アニリン誘導体の毒性リスク評価を行う。
以上、アニリンを基本骨格とした一般化学物質の置換基および置換基数等が及ぼすヒト体内動態への影響を明らかにする。さらに、昨年度実施したブロモベンゼン等の一般化学物質に関する研究成果と考え合わせ、ベンゼン環を母核構造とする一般化学物質の置換基の質的量的差異が及ぼすヒト体内動態への影響や関連性を明らかにする。さらに、ヒト肝細胞移植マウス血漿中のヒトアルブミンmRNAを肝障害指標として一部実測し、血漿中化学物質濃度との関連性を評価する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)

  • [雑誌論文] Different Hepatic Concentrations of Bromobenzene, 1,2-Dibromobenzene, and 1,4-Dibromobenzene in Humanized-Liver Mice Predicted Using Simplified Physiologically Based Pharmacokinetic Models as Putative Markers of Toxicological Potential2020

    • 著者名/発表者名
      Miura Tomonori、Shimizu Makiko、Uehara Shotaro、Yoshizawa Manae、Nakano Ayane、Yanagi Mayu、Kamiya Yusuke、Murayama Norie、Suemizu Hiroshi、Yamazaki Hiroshi
    • 雑誌名

      Chemical Research in Toxicology

      巻: 33 ページ: 3048~3053

    • DOI

      10.1021/acs.chemrestox.0c00387

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Metabolic profiles of coumarin in human plasma extrapolated from a rat data set with a simplified physiologically based pharmacokinetic model2020

    • 著者名/発表者名
      Miura Tomonori、Kamiya Yusuke、Hina Shiori、Kobayashi Yui、Murayama Norie、Shimizu Makiko、Yamazaki Hiroshi
    • 雑誌名

      The Journal of Toxicological Sciences

      巻: 45 ページ: 695~700

    • DOI

      10.2131/jts.45.695

    • 査読あり

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公開日: 2021-12-27  

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