研究課題/領域番号 |
20J21213
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
太田 遥子 神戸大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | パイプライン / 開水路 / スラスト力 / 模型実験 |
研究実績の概要 |
農業用開水路の管路化が進む中,本研究は,既設開水路内に圧力管路を敷設する工法を対象に,その設計手法を確立すべく,管路の力学挙動を解明しようとするものである.特にスラスト力が作用する管路屈曲部の挙動は,既設開水路壁の影響を強く受けることが予想される.そこで,令和2年度は,開水路内に敷設された管路を対象とした,水平載荷模型実験を実施した.幅1500 mm,奥行600 mm,高さ500 mmの実験土槽内に,外径114 mm,長さ600 mmの直管と,既設開水路を模擬したアルミ製の剛板を設置し,相対密度80%の乾燥珪砂で埋め戻した.模型管は0.5 mm/minの一定速度で変位させ,スラスト力を受ける管路の挙動を再現した.開水路壁の位置や形状を変化させ,既設開水路壁の状態が,埋設管のスラスト抵抗力へ与える影響を検討した. 模型実験から,以下の結果を得た:1)開水路壁が健全な場合,スラスト力に対して開水路壁が反力壁として作用することで,水平抵抗力が増大する,2)開水路壁による水平抵抗力の増加程度は,管と開水路間の距離によって変化し,距離が近づくほど水平抵抗力は増加する,3)開水路壁の劣化程度によっては,開水路壁による水平抵抗力の増加は殆ど見られない.以上の結果から,既設開水路壁を残存させた状態で管路を埋設することは,管路屈曲部の安定性向上が期待できるものの,その効果は開水路壁の健全性や位置によって変化することが明らかとなった. また,上記の模型実験に加え,管路の抵抗力-変位関係の定式化についても検討した.実験で得られた抵抗力と変位量を,最大抵抗力とその時の変位量を用いてそれぞれ無次元化したところ,無次元抵抗力-無次元変位量の関係は,開水路の条件に関わらず,概ね一致することがわかった.また,その曲線は,既往研究で提案されている双曲線を用いて近似できることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に提出した研究計画の通り,開水路内に敷設された管路を対象とした水平載荷実験を実施し,管路の水平抵抗力に対する開水路壁の影響について検討することができた.さらに,管路の抵抗力と変位の関係は,無次元化することで,開水路の有無や,開水路壁の状態,設置位置に関わらず,一つの双曲線として表せることがわかった.これは,今後研究を遂行する上での重要な知見である.以上のことから,現在までの研究状況としては概ね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度では,前年度に引き続き,開水路壁を設置した条件での埋設管の水平載荷実験を実施する.開水路壁の設置位置や形状に加え,地盤の密度等を変化させた条件で実験を行う.実験結果を基に,管路の水平抵抗力に影響を与えるパラメータを整理した上で,既設開水路の影響を考慮した,管路の水平抵抗力算定式の提案を目指す.また,個別要素解析も実施し,埋設管の水平変位挙動についてさらに考察を加える. 上記の実験に加え,管路を2本平行に埋設する,二条埋設時での管路挙動についても模型実験から検討する.土槽内に,模型管2本を平行に埋設した状態で,スラスト力を模擬した一定荷重を両模型管それぞれに負荷する.管路間の距離や埋設深,地盤密度等を変化させ,水平変位挙動に関する管路の相互作用について検討する.
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