研究実績の概要 |
2021年度において当初の研究実施計画にはなかったものの,平面n体問題の周期解から得られる組みひもについても他大学の研究者を交えて共同研究を行い,特定の周期解のクラスから得られる組みひもとの関係について明らかにすることに成功したが, 2022年度は,2021年度に得られた組みひもとn体問題に関する研究結果をより整備し,n体問題の周期解から定まるn次の組みひもと,それに対応する写像類およびpseudo-Anosovと呼ばれるタイプの写像類に対して定まるストレッチファクターと呼ばれる値を求めて,学術雑誌に投稿した. 本研究の重要性を保証する結果として,写像類がpseudo-Anosovであるとき, それは豊かな力学系としての構造をもつことや, また,3次の組みひもと3次元力学系には深い繋がりがあることなどが挙げられる.そのため,組みひもとの対応関係を考えることでn体問題の力学系に関しても,何らかの情報を取り出せないかというが上記の研究内容に関する一つのモチベーションになっている. ただし, m次元上のn体問題の微分方程式は一般には2mn次元となり, 角運動量が0であることなどを仮定することによって多少の reductionが可能であることを考慮したとしても, n体問題は低次元力学系とは言い難い. し たがって, 組みひもから得られるストレッチファクターやエントロピーなどがどの程度元のn体問題の力学系を反映しているかを明らかにすることが今後の課題として残っている.
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