研究課題
今年度は前年度の野外調査結果や得られたコアサンプルの解析を進め,津波数値シミュレーションを実施した.日高新ひだか町における新規調査から,沿岸域の堆積環境を復元し,津波堆積物の保存性に適した堆積環境を明らかにした.このことは地質記録から津波履歴を明らかにする上で,その調査地の堆積環境が津波堆積物の保存に適した環境であるかを評価しなければ,いくつかの津波痕跡を見逃してしまうことを意味する.日高地域で確認された17世紀の津波堆積物の波源を決定するため,土砂移動モデリングによって津波堆積物の再現を試みた.前年度に復元した堆積環境や海水準を基に古地形を設定し,千島海溝地震,駒ケ岳山体崩壊,大規模ストームを波源として用いた.この地域の砂層分布を再現可能であったのは千島海溝モデルのみであったことから,千島海溝の巨大地震モデルが北海道太平洋沿岸西部地域においても妥当な規模であることを示した.泥質津波堆積物の検出について,前年度実施されたSEM-EPMA分析によって得られた肉眼では確認できない鉱物粒子について,目視可能な砂層より内陸へと分布した津波堆積物であるかを逆解析を用いて検証した.堆積物情報を用いて津波の水理条件を復元するFITTNUSS-DNNによって推定された津波の遡上範囲は泥炭層に鉱物粒子が検出された範囲と一致しており,これらが津波によって運ばれたことを支持している.本手法を用いて泥炭層中の鉱物を詳細に調べることで,古津波の浸水範囲をより内陸まで追跡することが可能である.えりも地域における津波履歴や肉眼で確認できない津波堆積物の追跡手法の成果は国際誌に掲載され,古津波のより正確な浸水範囲の推定に資する.新ひだか町における古環境と津波堆積物保存の関係性および古津波への土砂移動モデリングの適用の成果についても国際誌に掲載され,古地震の規模推定の精度向上に貢献すると考えられる.
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) 備考 (3件)
Quaternary Science Advances
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Sedimentary Geology
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えりも研究
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巻: 23 ページ: e2022GC010334
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