本年度の研究は大きく二つに分けられる.一つ目は,カードベース暗号に関する研究である.当分野で得られた成果は次の通りである.(1) 2017年に発表した3入力多数決プロトコルを基にしきい値関数プロトコルへ拡張 (2) 任意の参加者数に対して適用可能な多数決プロトコルにおけるカード枚数の削減 (3) カードベース暗号において初めて秘匿積集合プロトコルの実現方法を提案.これらの成果は計算機ベースの秘密計算からカードベース暗号への汎用的変換手法を構築する準備段階として,カードベースプロトコルの構築技術を発展する中で得られた成果である. (1)と(2)の成果はそれぞれ,査読付き国際論文誌New Generation Computingに発表した.(3)の成果は国内会議CSS2021で発表した.二つ目は,ビットコインに基づく秘密計算である.本研究は,計算機ベースの秘密計算とカードベース暗号間の変換を考える上で大きな課題となるモデル間のギャップを埋める取り組みとして行った.計算機ベースの秘密計算とカードベース暗号では達成できる安全性に差があり,両者間での変換を構築するうえでこのギャップは障壁となる.これを解決ために,計算機ベースの秘密計算にビットコインのようなブロックチェーン技術を組み合わせることで達成できる安全性を向上する研究を行った.ビットコインをベースとした秘密計算では,通常モデルでは達成できない安全性を達成できる.その一つが公平性であり,プロトコルを不当に中断した攻撃者に対し金銭的なペナルティを課すことでこれを達成する.ビットコインベースの秘密計算に関する知見を深める中で,参加者数nに対して従来はO(n)ラウンドが必要であったビットコインに基づく公平な秘密計算を, O(1)ラウンドに改善する成果を得ることができた.本成果は査読付き国際会議Tokenomics2021で発表した.
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