研究課題/領域番号 |
20J21337
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
CHEN YUJIE 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | Anammox / Hydroxyapatite (HAP) / 窒素除去 / 低濃度窒素除去 / 高濃度窒素除去 / 排水処理 |
研究実績の概要 |
連続流式一槽式HAP-Anammoxプロセスによる高濃度と低濃度の実窒素含有排水の処理に関する実験的研究を行った。これらの連続実験は温度を25℃に固定して主に濃度とHRTを変化させて窒素除去効果、微生物の群集構造および各機能グループの活性に及ぼす負荷の影響を検討した。 高濃度窒素排水の研究においては、水産排水の嫌気性メタン発酵処理水を対象として流入水のアンモニア窒素濃度1140 mg/L、HRT 15時間、窒素負荷1.8 g/L/dの条件で長期連続を行った。その結果、窒素除去率88.2%と窒素除去速度1.51 g/L/dが得られた。 低濃度窒素排水の研究においては、下水の嫌気性MBR処理水を対象として流入アンモニア窒素濃度38 mg/L、HRT2時間、窒素負荷0.46g/L/dの条件で長期連続を行った。その結果、窒素除去率80%と窒素除去速度0.36 g/L/dが得られた。一般的に、このような低濃度条件では亜硝酸細菌が増殖しやすいため、安定処理は難しいと言われているが、本研究は高FA濃度によるNOB抑制方策を試み、NOB成長の抑制に成功した。また、反応槽における汚泥濃度を6.9 g/Lと高く維持することで、高窒素除去能力を確保できた。 本研究より、一槽式HAP-Anammoxプロセスは高い汚泥濃度を保持できたので、他の研究より優れた窒素除去効果を得ることができた。また、この二つの反応槽における微生物群集構造によって解析した結果、Anammox細菌とアンモニア酸化細菌は優占菌群であったことが分かった。なお、本研究のような一槽式HAP-Anammoxプロセスでは、HAP形成によるAnammox細菌保持効果が重要なので、必要に応じてカルシウムの投入によるHAPの形成促進が必要であると考えられる。 以上のような実験的結果を踏まえ、関連論文と比較して考察し、英文論文を2本発表できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
多くの関連論文を読み、世界における排水処理・窒素除去・リン回収等に関する研究とHAP-Anammoxの開発動向を把握し、研究を計画的に推進した。 (1)連続流式一槽式HAP-Anammoxプロセスによる実排水からの窒素除去について検討を行った。長期連続運転において定期的にサンプリングを行い、反応槽の運転を確認し、重要的な指標(反応槽の温度、pH、窒素濃度、COD濃度、無機炭素濃度、汚泥濃度、汚泥沈殿性能等)を測り、反応槽の良好な運転効果を実現した。また、低濃度窒素排水の研究においては、二日一回浄化センターに行き、下水の嫌気性MBR処理水を採した。 (2)窒素濃度、HRT等の制御条件を変化させて窒素除去効果、微生物の群集構造および各機能グループの活性に及ぼす負荷の影響を検討した。これらの結果、連続流式一槽式Anammoxプロセスが実排水に応用し、高効率で窒素除去する可能性を示した。 (3)二つ実験の結果を分析し、英文学術論文2本、日本語学術論文1本を投稿した。また、学会の参加し、新しい研究結果をシェアしたとともに、他人の研究方法も学んだ。 以上のように、当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
(1)連続流式一槽式HAP-Anammox反応槽における高負荷人工排水の処理を行う。長期連続運転において毎日サンプリングを行い、各態窒素濃度、リン濃度、カルシウム濃度と微生物群種構成等を定期的に測り、反応槽の安定的な運転効果を確認し、プロセスの制御条件等を検討する。HRT・曝気量等の条件を制御し、徐々に反応槽内に必要な無機炭素濃度、汚泥濃度、DO濃度等の条件を達成する。 (2)流入水にカルシウムを投入し、HAPグラニュールを形成させるとともに、リンの除去効果を研究する。また、適量のAOBとAnammox細菌濃度を維持できるために、グラニュールの形成及びカルシウムの投入等を試み、HAP-Anammox汚泥の沈殿性能、粒径分布、顆粒の状態等を評価する。 (3)連続実験において微生物の群集構造および各機能グループの活性に及ぼす高負荷の影響を検討する。顕微鏡の観察、分子生物学実験、FISH実験と活性テストを行い、システムにおける微生物群集構造の変遷、グラニュール汚泥に微生物の空間分布、グラニュール汚泥の形態を検討する。 (4)一槽式HAP-Anammoxプロセスにおける高負荷人工排水を処理する能力と効果を評価する。 (5)このシステムにおいて、窒素を安定的に除去するために、最適なHRT、アンモニア濃度、窒素の除去による微生物の増殖速度とカルシウムの投入量によるHAPの形成速度、最高的な汚泥濃度と最高的な窒素除去速度に関する研究を行う。
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