研究課題
消化管の蠕動運動は平滑筋、腸管神経、カハール介在細胞(Interstitial cells of Cajal:以下ICCと呼ぶ)によって制御されている。しかしながら、どのようにこの3種類の細胞が協調しているかはよく分かっていない。本研究はこの3種類の細胞がどのように同調性を確立するのかを明らかにすることを目的とし、新たにトリ胚消化管の筋肉層の細胞培養法を確立し、その培養過程で形成される蠕動運動を模したオルガノイドの解析を進めてきた。まずはツールの開発として抗c-Kit抗体に関する報告を述べる。これまで抗c-Kit抗体はICCをはじめとする様々な細胞のマーカーとして知られており、市販の抗体がいくつも作られていたが、ニワトリに有用な抗体が存在しなかった。そこで、本研究ではICC特定のためのニワトリに有用な抗c-Kit抗体の作製及びその有用性の検証に取り組んできた。最終年度である今年度はそれらの内容をまとめ、原著論文として発表した。続いてオルガノイドの解析について報告する。これまでに、オルガノイドが主にICCと平滑筋によって構成されていること、オルガノイド同士が融合すること、そして融合後には独立したリズムから同調したリズムで収縮を示すようになることを明らかにしていた。そこで、今年度は、平滑筋もしくはICC、どちらの細胞が同調性を制御するのかを特定するため、ハイドロゲルを用いて解析を行った(京大医生研・永樂研究室との共同研究)。この系では、オルガノイド間の融合を妨げながら、同調した収縮を再現した。免疫染色をした結果、同調性がみられるとき、オルガノイド間をつなぐように平滑筋が存在していることが分かった。したがって、この同調性は少なくとも平滑筋によって生じることが示唆され、消化管内での細胞間同調性機構の一端が見えてきたと考えている。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Development, Growth & Differentiation
巻: 64 ページ: 446~454
10.1111/dgd.12808