研究課題/領域番号 |
20J21376
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
深谷 拓未 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 食 / 感覚 / イタリア |
研究実績の概要 |
年度当初に計画していた研究成果の発表および論文執筆については、計画的に遂行することができた。まず、本年度5月の日本文化人類学会研究大会においては、これまでの文献調査と参与観察調査で得られた資料を整理する形で口頭発表した。また、本学会においては、文化人類学において食を専門とする研究者から、今後の研究方針を含めた、研究指導を賜った。また、論文執筆については、『食文化研究』に論文を投稿し、査読の結果受理され、印刷された。本論文執筆においては、査読者の政治的側面からの指摘により、より一般性の高い論文となった。 「イタリアのワイン農園での味覚に関する研究」においては、10月1日よりイタリアに渡航し、2022年9月末日までの、長期的な参与観察調査を現在遂行中である。イタリアの現地大学において、文化人類学を専門とする教授に指導を賜った。また、フィールドワークについては、本研究が焦点化するトスカーナ地方を中心としたフィールドを設定することができており、来年度9月まで継続的に研究を継続する目途が立っている。 一方、日本国内における「ソムリエを対象にした味覚に関する研究」については、本年度前期に、ワイン業界の主催する講習会に参加した他、ソムリエ個人を対象としたインタビュー調査行うことで、資料収集に努めた。これらの資料は、現在遂行中のイタリアにおける参与観察調査と比較検討することで、2022年7月に開催されるJapan Anthropology Workshop の研究大会における口頭発表の基礎とする予定である。 「他分野における味覚研究との比較検討」については、主に感情・情動をテーマとする研究者に指導を受け、食文化、または感覚研究に留まらない視座を含めた研究を遂行できた。さらに、イタリアにおける大学では、食文化を主に農業政策の観点からアプローチする研究者等にも、直接の指導を賜ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果の発表および論文執筆については、当初の計画通りの成果を挙げることができている。一方で、前年度に、イタリアでの参与観察調査が遅れを取ったために、資料が不足している。そのため、現在執筆中の論文が少なく、来年度に論文執筆や学会発表が定期的に遂行できるかは不透明な状態である。そのためにも、後述するイタリアでの参与観察調査を早急に執り行い、定期的に資料を整理することで、調整を図りたい。 「イタリアのワイン農園での味覚に関する研究」については、ほぼ計画通りに執り行うことができている。本研究の焦点化するトスカーナ州におけるワイン生産の現場では、調査の基礎となる具体的な調査対象を確定でき、高度に専門的なデータを含めて資料収集を進めている。 日本国内における「ソムリエを対象にした味覚に関する研究」については、味覚表現を収取、データ分析することで、食や味覚を文化人類学的に議論した先行研究と比較検討している最中である。なお、この比較検討の成果発表については、本年度中に執り行うことができず、少々遅れをとっていると言わざるを得ない。なお、この研究の成果については、翌年度に持ち越し、2022年7月に開催されるJapan Anthropology Workshop の研究大会において口頭発表する予定である。 「他分野における味覚研究との比較検討」については、所属機関の特性上、様々な分野の研究者に指導を受けることが比較的容易であると思われる。当然、文化人類学に学術的に近似する地理学の研究者等には指導を乞うことができた一方で、感覚研究に強い関連性があると思われる神経学や医学と、本研究との比較検討ができていない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
研究成果の発表および論文執筆については、日本におけるソムリエを対象とした調査の結果を整理するために、2022年7月に開催されるJapan Anthropology Workshopの研究大会で発表する。また、イタリアでの参与観察調査終了次第、『文化人類学』への論文執筆にとりかかることで、博士論文のための議論の基礎を築く。一方で、『食文化研究』もしくは『食科学研究』も来年度中に論文を完成し、より広い視座からのアプローチを試みる予定である。 「イタリアのワイン農園での味覚に関する研究」は、余す6か月の滞在期間中に、単に生産過程のみならず、流通や消費体系を含めた、グローバルなレベルでの調査も遂行していきたい。その上で、味覚というキーワードを常に念頭に置き、ワインを巡る味覚の変化・変容、または文化による衝突・相違を浮き彫りにするような調査を戦略的に執り行う予定である。必要に応じて、イタリアの現地大学における図書館を利用することで、政治学的かつ歴史学的な資料を収集し、通時的かつ共時的な資料の比較検討へと結び付ける予定である。 日本国内における「ソムリエを対象にした味覚に関する研究」については、常に調査対象との連絡を密にし、特に日本における味覚認知の特徴を浮き彫りにするという目標でアプローチすることが必要である。というのも、こうしたアプローチによって、当然イタリアでの調査資料との比較検討となるばかりでなく、グローバルなレベルでの味覚の検討をすることが可能となると期待されるからである。 「他分野における味覚研究との比較検討」については、特に神経学・医学と、食・味覚研究において重要な関連分野と考えられた農業政治学・農業経済学の文献調査を早急に行う。また、所属機関の研究者、イタリアの現地大学の図書館や研究者を訪ねることで、本味覚研究を特徴づけることで、文化人類学的な学術的な貢献を目指したい。
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