本研究の主な目的は近代における日中両国の「新聞学」のつながりを分析し、両国における「新聞学」確立の学術的な流れを明らかにすることである。 2020年度は中国北京の中国国家図書館で「新聞学」に関する文献を調査する予定だった。新型コロナウイルス流行の影響を受け、渡航が難しくなり、調査を断念した。代わりに、日本で実施できる調査方法を模索した。 新型コロナウイルス流行の影響を受け、日本と中国の史料のデジタル化が進んでおり、「新聞学」に関する史料の一部はインターネットで閲覧できるようになった。一部の文献は日本の東方書店を利用して、中国から取り寄せした。また、日本の国会図書館(関西館)が所蔵する史料も利用した。 上記の調査方法で、本来の調査目的をある程度カバーした。調査で入手した史料や文献を利用し、日本で「新聞学」を学び、1930年代の中国「新聞学」の発展に貢献した袁殊や日本占領下の北京でに「新聞学」の教育を行った「中華新聞学院」に関する研究を実施した。 日本「新聞学」と中国「新聞学」の関係性について、今まであまり研究されていない。現在の日中両国のメディア史を理解するために、両国のジャーナリズム思想の根幹であった「新聞学」の歴史的由来を知る必要がある。本研究は日中両国の「新聞学」のつながりという視点から、袁殊と「中華新聞学院」を研究し、日本「新聞学」の学知はいかに中国「新聞学」の展開に影響を与えたのか、という問いを解明することができた。
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