本研究は、近代日本における病気治療の実態とその背景の分析解明を通じ、とくに病気の当事者となった病者とその家族の立場から病気や、医療がいかなるものであったかを解明することを目的としている。また、併せて医療の「近代化」の実態と深度の再検討を行い、具体的な病気の当事者の病気対処行動への影響力を解明する。 上記目的の達成のため、本年度は下記の通り、大きく分けて2つの作業を行った。なお、昨年度から続く新型コロナウィスル感染症拡大の影響による研究環境の制約から、昨年度の研究計画の繰り越しを行った。そのため、下記研究報告は、昨年度から繰越で行っている研究計画にかかわる作業も一部含まれている。
1、近代における天然痘流行の実態と種痘実施のための法整備の方針について先行研究調査・史料調査・分析を行った。これによって、具体的な感染者数による感染状況の把握、天然痘に対する具体的な対症療法の実態調査、種痘後の予後不良の実態調査、予後不良に対する具体的な対症療法の実態調査などを行った。 2、近代における野口整体とその創始者である野口晴哉の病気治療にかかわる思想について先行研究調査・史料調査・分析を行った。これによって、野口の「全生」思想と野口整体の実践との連関の調査、野口晴哉自身の病気治療経験と病気治療者としてのスタンスとの連関の調査などを行った。 上記作業のうち、とくに2によって得られた成果は、次年度に学会報告および論文化を行う予定である。
|