研究課題/領域番号 |
20J21509
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
河本 真夕 神戸大学, 人文学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | ナバレーテ・エル・ムード / エル・エスコリアル修道院 / フェリペ2世 |
研究実績の概要 |
本年度は、フェリペ2世の王付き画家ナバレーテ・エル・ムード(1538頃-1579年)の没後、エル・エスコリアル修道院の居室に未完成で残されていた《聖ラウレンティウスの埋葬》について、その制作背景の検討を行った。本作は、エスコリアルの献堂聖人を主題とする点で重要な意味を持つことが窺える作品である。しかし、従来の研究ではそれほど注目されてきたとはいえず、同時代に修道院臨時聖堂に配置されていたティツィアーノ作《聖ラウレンティウスの殉教》(1567年)との関連性が指摘されるにとどまっていた。しかしながら、本作にはティツィアーノの作品から画家独自の創意が加えられていること、さらに聖人の埋葬場面を独立した形で扱っているという本作の特徴については、これまで踏み込んだ研究はなされてこなかった。 そこで申請者は、1970年にJ・ジャルサ・ルアセスが本作の聖ラウレンティウスの体が強調されていることについて、フェリペ2世によってエル・エスコリアルに収集された聖人の聖遺物と関連づけていることに着目し、エル・エスコリアルにおける祭壇画と聖遺物との関連についてより具体的な検討を行った。その結果、ティツィアーノの《聖ラウレンティウスの殉教》やナバレーテの聖堂身廊部における聖人を表した祭壇画群は、当時同じ場所に安置されていた聖人の聖遺物と相互に呼応していたこと、そして本作が王室霊廟としてのエル・エスコリアルという場所とそのために収集された聖遺物との関わりの中で成立したものであることを新たに指摘した。以上の成果は学会誌『スペイン・ラテンアメリカ美術史研究』に投稿し、掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度の研究はコロナウイルス感染拡大の影響で令和4年に繰り越すことになったが、当初の予定通り順調に研究を進め、本年度の目標であった学会誌『スペイン・ラテンアメリカ美術史研究』への投稿を達成したため、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度の研究はコロナウイルス感染拡大の影響で令和4年に繰り越すことになったが、本年度内に順調に研究を進めることができたため、特に大幅な計画の変更は必要ないと思われる。次年度は、本年度に投稿した論文をさらにブラッシュアップし、部分的に修正しながらに博士論文の1章分に編集するつもりである。
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