研究課題/領域番号 |
20J21547
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
秋山 茉莉子 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 小型推進機 / 燃焼 / ハイブリッドロケット / マグネシウム / 水 |
研究実績の概要 |
本研究課題の大目的「小型宇宙機向け推進機:金属-水スラスタの実現」に照らして,本年度は,1)定常燃焼実験系の構築, 2)修士研究の対外発表,という2点の進捗を得た. 1)修士研究においては,密閉空間の水蒸気中にてマグネシウムワイヤの燃焼現象を観測していた.しかし,実際の推進機(スラスタ)では,燃焼器は密閉空間ではなく開放系とし,下流にノズルを装着し,燃焼による高温生成物を加速排出することで,燃焼エネルギーを推力に変換したい.そこで,マグネシウムワイヤと水蒸気を外部から供給し定常的に燃焼させることのできる実験系の構築が必要であった.まずは,修士研究までの燃焼器の流用を試みるため,空気の流れ中におけるマグネシウムワイヤの定常燃焼観測を行った.その結果,マグネシウムワイヤ供給装置として市販の溶接ワイヤ供給装置が適用可能であることを確認したものの,乱雑な流れ場,推進機応用に見合わない大きな体積,ワイヤ供給部分からのリークの多さといった課題を発見した.これらを改善するため,新しい燃焼器を設計・構築し,次年度の水蒸気中の定常燃焼観測に準備が整った状態となった.燃焼器のみを取ると推進機の実設計により近しいものであり,本実験系における燃焼速度や燃焼圧力波形の取得は,推進機の設計点を見出すために重要なものである. 2)修士研究の,密閉空間の水蒸気中におけるマグネシウムワイヤの燃焼現象観測について,論文誌に投稿し受理された.また,国内の学会にて,修士研究の延長として行った,密閉水蒸気中のマグネシウムワイヤ燃焼実験の結果をまとめて発表したほか,空気の流れ中での定常燃焼についての内容をまとめて国際学会にて発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の大目的「小型宇宙機向け推進機:金属-水スラスタの実現」に照らして,本年度は,1)定常燃焼実験系の構築, 2)修士研究の対外発表,および,3)小型推進機実機の地上試験完了という3点の進捗を得た.これらは概ね本年度の当初の計画通りである. 1)修士研究においては,密閉空間の水蒸気中にてマグネシウムワイヤの燃焼現象を観測していた.しかし,実際の推進機(スラスタ)では,燃焼器は密閉空間ではなく開放系で,下流にノズルを装着し,燃焼による高温生成物を加速排出することで,燃焼エネルギーを推力に変換したい.そこで,マグネシウムワイヤと水蒸気を外部から供給し定常的に燃焼させることのできる実験系の構築が必要であった.まずは,修士研究までの燃焼器の流用を試み,空気の流れ中におけるマグネシウムワイヤの定常燃焼観測を行った.結果,マグネシウムワイヤ供給装置として市販の溶接ワイヤ供給装置が適用可能であることを確認したものの,乱雑な流れ場,推進機応用に見合わない大きな体積,ワイヤ供給部分からのリークの多さといった課題を発見した.これらを改善するため,新しい燃焼器を設計・構築し,次年度の水蒸気中の定常燃焼観測への準備を整えた. 2)修士研究内容について,論文誌に投稿し受理された.また,国内の学会にて,修士研究の延長として行った密閉空間実験の結果をまとめて発表したほか,空気の流れ中での定常燃焼についての内容をまとめて国際学会にて発表した. 3)修士より携わっている小型推進機の研究開発プロジェクトにおいて,宇宙空間での運用に向けた地上試験を完了した.具体的には,宇宙空間を模擬した真空中における長時間作動試験や,異常検知のロジック作成等を,学生チームのリーダーとして積極的に進めた.本成果について,国内学会でポスター発表を行った.なお,本推進機の構造や作動手法は上述の金属-水スラスタに応用できるものである.
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今後の研究の推進方策 |
本研究では,水蒸気中でマグネシウムワイヤの一端と放電電極間で放電を起こすことにより,マグネシウムワイヤを一端から加熱して着火させる手法を用いている.特に令和3年度は,1)水蒸気流れ中におけるマグネシウムワイヤの定常燃焼現象の観測,2)実験系の小型化,および,3)推力測定系の構築,の3点を主要な研究課題とする. 1)今年度構築したマグネシウムワイヤと水蒸気を定常的に供給しながら燃焼させることのできる実験系を用いて,マグネシウムワイヤの定常燃焼の反応パラメータを明らかにし,燃焼速度を取得する.具体的には,水蒸気の流速,水蒸気供給方向,マグネシウムワイヤの供給速度等を変更する. 2)現在の系では,ワイヤ供給装置と放電回路が大型で,小型推進機への応用に向かない.1辺5-10 cmの立方体を目安の大きさとして,小型化を図る.具体的には,現在は放電回路に市販のトランスを用いているが,昇圧回路を自作する.ワイヤ供給装置にも市販品を用いているが,適切な送給ローラーを設計し,ステッピングモーターを駆動装置として,小型化を図る. 3)上述の定常燃焼実験系の推力を測定する系を構築する.手法はロードセルを用いる方法や,回転ばねを組み込んだ振り子を用いる方法が考えられるが,想定される推力レンジから適切な方法を選択し,推力測定装置を設計・構築する.研究室にて推力測定装置が数多く設計されており,知見を活かすことが可能である.燃焼器は高温になるため,推力測定装置と燃焼実験系を断熱する工夫を施す. 以上の成果について,国際学会1件,国内学会1件での口頭発表,および,論文誌への投稿を予定している.令和4年度は推力測定を中心に行い,得られた推進性能から金属-水スラスタの最適な設計や作動点を見出す.
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