研究課題/領域番号 |
20J21551
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田中 遥暁 東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | NBI開発 / ファラデーカップ / 軌道計算 / NPA開発 / 光学設計 / イオン加熱特性 |
研究実績の概要 |
トカマクプラズマ合体加熱はギガワット級のイオン加熱エネルギーを得る革新的な方法であり、経済的な核融合炉である球状トカマク(ST)プラズマのスタートアップ手法として効果的である。合体時の爆発的なエネルギー変換である磁気リコネクションによって加熱されたSTはプラズマのエネルギーが高く、不安定になりやすいことから、本研究では(i)中性粒子ビーム入射(NBI)による圧力・電流分布の制御を行うことで、生成されたSTプラズマの安定化・長時間維持を目指すとともに、(ii)NBIや磁気リコネクションによって生成される高エネルギーイオン検出を行うことで高エネルギーイオン物理の追及を目指す。 本年度では、(i)のTS-6装置へのNBI実装にあたり、プラズマ源にワッシャーガンを用いた低エネルギー・大電流のパルス型NBIの開発を行った。また、粒子軌道計算で高いビーム粒子捕捉率が得られた入射角度の範囲で最適化が行えるよう、NBI角度調整機能を設計した。さらにビーム電流計測に用いるファラデーカップは静電場を印加することで二次電子を極限まで閉じ込めることのできるよう高効率化を目指した。NBIの各部品は設計・製造が終了し、次年度でいよいよ組み立てのもと装置実装を完了させる予定である。 (ii)の高エネルギー粒子計測では荷電交換反応によりプラズマから拡散された中性粒子のエネルギーを計測しており従来の静電式のものから質量分析可能な磁界・電界を応用した様式に改良した設計を行った。計測範囲は数百eV~10keVのエネルギー粒子を想定しており、そのための電磁石設計や、検出器に用いるマイクロチャンネルプレートを含む光学設計も行った。また、エネルギー校正を行うためのイオン源の開発も着手した。 上記に並行して、磁気リコネクションによるイオン加速・加熱特性解明に向けたイオン温度・静電ポテンシャル計測を行い論文を一本執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
全体的な計画の遅れに関しては昨年度から取り組んでいる高ガイド磁場リコネクションでのイオン加熱の物理を追及に向けた、イオン温度計測に加え静電ポテンシャル計測を組み合わせた実験に時間を費やしていることが大きい。ポテンシャル計測の回路製作やノイズ改善に加えて、ガイド磁場比を変化させた様々な実験オペレーションの開拓を精力的に行った。 NBI開発・実装においては本年度中に実装を終了する予定であったが、設計変更が伴ってTS-6本体に取り付けるのは次年度に持ち越しになってしまった。次年度の設置に際し、真空システムや電極への配電システムを構築し迅速な導入を目指したい。 NPAによる高エネルギー粒子計測については最終設計まで完了しているが先に製造を依頼していたイオン源の製造に時間がかかっている模様なので納品され次第NPA容器・コイル製作を依頼する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降の研究計画として、(i)NBIのTS-6装置へのインストール・合体プラズマの長時間維持オペレーションの開拓、(ii)質量・エネルギー分析用E//B型NPAの製造とTS-6装置への導入を進めていく。加えて延期されていた英国トカマクエナジーとの共同研究派遣に伴い(iii)高磁場トカマク合体プラズマにおけるイオン加熱物理の研究に着手していきたい。 (i)NBI導入プロセスは五月中に終わらせ加速電極用放電回路の構築、イオン源用ワッシャーガンの組み込みを行った後、ビーム入射オペレーションを実施していく。最適な入射角度調整を行い、合体プラズマのMHD安定化を目指した電流・圧力分布の制御方法の開拓を進めていく。 (ii)質量・エネルギー分析を備えたNPA開発では電磁石を含めた装置内部の製作を次年度前半に終了させ、後半では設計したイオン源を用いたkeV級の検出器エネルギー校正を実施する。検出器に用いるMCPの電圧印加回路を組むとともに、拡大光学系レンズ・ICCDカメラを含めた光学系の構築を完了させる。 (iii)英国核融合ベンチャートカマクエナジーとの共同研究では超電導コイルを用いた高磁場トカマク合体による数keVに及ぶイオン加熱の計測に携わることでTS-6とのスケール横断的なイオン加熱特性を探求する。さらに次年度の実験フェイズでは新たにNBI導入が予定されているのでより大きな加熱パワーを有するNBIによる合体プラズマ安定維持の観点からもTS-6に応用できるノウハウを吸収したい。英国派遣時期はコロナウイルスの状況にも左右されるが次年度夏を予定している。
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