研究課題/領域番号 |
20J21594
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
加藤 辰弥 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 経頭蓋磁気刺激 / 体性感覚誘発電位 / 求心性抑制 / 上下肢 / 神経筋電気刺激 |
研究実績の概要 |
本年度は主に以下の研究を実施した。 (1)上肢筋の収縮が下肢筋を支配する皮質脊髄路に与える影響について:上肢筋の収縮が下肢筋を支配する神経に与える影響について、随意収縮時と神経筋電気刺激(NMES)による随意的でない収縮時における変調の検証した。結果として、上肢筋の随意収縮時にのみ下肢筋の皮質脊髄路の興奮性が増大することが明らかとなった。
(2)体性感覚野における上肢筋の収縮が下肢筋に与える影響について:運動の結果として生じる体性感覚情報の到達先である体性感覚野における遠隔筋の収縮の影響を検証した。(1)と同様の筋収縮強度と実験条件(随意収縮とNMESによる収縮)で体性感覚野の下肢領域の興奮性が変調するかどうか、感覚神経を刺激した直後に脳波(EEG)上に現れる体性感覚誘発電位(SEP)を計測することで検証した。皮質脊髄路の変調と同様に、下肢の感覚神経を刺激することで得られるSEPの振幅は上肢筋の随意収縮時にのみ増大し、NMESによる収縮時には変調しなかった。その結果、収縮強度が上がると体性感覚野においても上肢筋の収縮が下肢筋に対して影響を与えることが明らかとなった。
(3)上肢筋の収縮が下肢筋の感覚運動統合に与える影響について:末梢の感覚神経に電気刺激を与えた直後に、一次運動野に経頭蓋磁気刺激(TMS)を行うと、得られる運動誘発電位(MEP)の振幅が安静時と比較して減少することが知られている。これは求心性抑制と言われ、末梢から上行した感覚情報が一次運動野に影響を与えることから感覚情報と運動の統合、感覚運動統合の指標として用いられている。下肢筋におけるこの求心性抑制が上肢筋の収縮によってどのように変調するかについて検証した。その結果、上肢筋の収縮により下肢における求心性抑制の脱抑制が生じることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験の実施状況について、4月から6月までは大学への入構規制により実験を全く行えなかったが、7月以降は精力的に実験を行うことができた。これにより上肢筋の収縮が下肢の感覚運動制御に与える影響について包括的に研究することができた。これは1年間を通しての大きな成果であったと言える。一方で、次の研究段階として掲げていた上肢と下肢を協調させる運動学習課題について、当初の予定では大きな進展を想定していたが、実験課題とパラダイムの完成に留まっている。要因として、実験参加者を多数リクルートする必要があったものの、オンライン授業への移行に伴う大学に来る学生数の減少や感染症へのリスクから、実験参加者の募集がままならなかったことが挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に行われた実験において、徹底した感染症対策を設けた上で参加者に不安を与えることなく実験を実施する段取りを身につけることができた。したがって、構内に実験参加者公募を貼ることで参加者を募集することを試みる。
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