研究実績の概要 |
前年度取得した定型発達 (typical developed, TD) 者の終助詞理解の神経基盤を検討するための機能的磁気共鳴法 (functional magnetic resonance imaging, fMRI) 実験のデータ解析を進めた。伝統的に中核言語領域と呼ばれる脳領域や、社会認知関連領域の活動が終助詞の有無・種類に応じて変化することを明らかにした。また、社会認知関連領域の活動が自閉スペクトラム症 (autism spectrum disorder, ASD) に関する個人差に応じて変化するという、ASD者の社会的コミュニケーションの困難と終助詞使用の非典型性の関係を神経科学的な観点から裏付ける結果を得た。現在論文執筆中である。 fMRIのデータと、前年度までに実施したASD者とTD者の終助詞産出実験の結果、日常会話コーパス収録話者の自閉傾向と終助詞使用率の関係の調査結果をまとめ、国内シンポジウムで口頭発表した。 文脈に応じた終助詞使用と社会認知の関係について表出言語データを基に検討するために、初年度までに実施していたTD者を対象とした文脈に応じた終助詞「よ」「ね」使用を検討する文産出実験のデータを再分析した。その結果、終助詞「ね」の産出頻度が個人の共感性・自閉傾向に応じて変化することが明らかになった。本調査の結果をまとめた論文が国際学術誌に掲載されることが決定した。 ASD者・TD者の文脈に応じた終助詞使用についての大規模調査を実施するために昭和大学発達障害医療研究所との共同研究を開始し、質問紙の改訂版を作成するためのTD者を対象としたオンライン予備調査を実施し400名分のデータを取得した。さらに、ASD者の語用論能力を検討するための行動実験および語用論テストについて、前段階であるTD者を対象とした実験を開始し19名分のデータを取得した。
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