研究課題
半導体中の水素不純物は、キャリア生成及びキャリア補償の主な原因であることが知られている。また水素を積極的に取り込むことで、固体燃料電池等での電荷担体として利用する事も可能である。結晶中で多様な振る舞いを示す水素の安定性や微視的な状態を理解するには、第一原理計算を用いたシミュレーションが有用である。本研究では、第一原理計算により、数百規模の半導体材料、特に酸化物中の水素不純物に対して系統的な計算を行い、結晶中の水素の振る舞いに関する普遍的な理解を目的とする。本年度前半は、酸化物における不純物水素の結晶格子間位置の推薦手法の検討を進めた。その結果、様々な酸化物における水素の安定な局所構造及び電荷遷移準位に関する重要な知見(Computational Materials Science 誌2022年出版)が成果として得られた。また、この成果に基づき、第一原理計算の自動化プログラムに格子間水素のモデルを生成するルーチンを実装した。本年度後半は、先述した自動計算プログラムを用いたハイスループット計算を実行し、データベースの開発に取り組んだ。その際、対象とした酸化物はMaterials Projectのデータベースに存在する内、非磁性、非金属、競合相に対して安定である等の条件を満たす約1,200酸化物とした。その後、結晶構造の対称性及びバンド構造やフォノン振動数などの第一原理計算結果に基づくスクリーニングを行い、最終的に900個強の酸化物に対して、格子間の水素不純物の計算を行なった。また得られた計算結果について、電荷遷移準位の解析を行った結果、今後の研究方針における有益な知見を得た。
2: おおむね順調に進展している
酸化物の結晶格子間における水素不純物の局所構造に関する知見を得るとともに、その計算モデルを構築するプログラムの実装をした。また、実際にハイスループット計算を行い、得られた計算結果の解析に着手する段階まで進んだ。
最終年度では、ハイスループット計算により得られた計算結果の解析を進めるとともに、得られた研究成果を論文としてまとめていく。また、研究の進捗状況に応じて、酸素サイト置換型の水素不純物の計算を追加する事も検討する。
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Computational Materials Science
巻: 203 ページ: 111068~111068
10.1016/j.commatsci.2021.111068