研究課題/領域番号 |
20J21667
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小澤 佳祐 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
|
キーワード | 高圧地球科学 |
研究実績の概要 |
高圧力発生装置ダイヤモンドアンビルセル中の試料について、蛍光 X 線収量法でX線吸収分光測定を行う手法を確立した。今まで高圧下その場X線吸収分光測定を行っている研究の多くが透過法でも測定できる高濃度試料を対象にしていたが、本手法を用いて試料中に微量に含まれる元素について分析できるようになった。さらに、高圧下試料のX線分光法について問題になりうるダイヤモンド由来のX線回折についても、ガスケット側からX線を入射することによって克服している。 この手法を用いて、高圧下玄武岩ガラス中に微量に含まれるタングステンについて測定を行った。玄武岩ガラス中のタングステンは10-35GPaで4配位から6配位に変化することが明らかになった。タングステンの配位数変化は、先行研究で報告されている溶融玄武岩中のケイ素の配位数変化に非常に良く似他挙動を示すことが分かった。このような配位数変化は、高圧下の微量元素の分配挙動に影響を与える可能性がある。これらの研究結果をまとめた論文を国際学術誌に投稿したところ、令和3年度の4月に採択された。 また、レーザー加熱式ダイヤモンドアンビルセルを使用した高圧力下溶融ケイ酸塩-固相ケイ酸塩間の微量元素の分配実験も並行して行っている。この研究手法は昨年度には研究手法が確立されており、今年度も引き続き研究を行っていく。 研究の大局的な目標として、微量元素のX線吸収分光法と同時に高圧下での元素分配実験を行うことで、高圧下での微量元素の局所構造の変化が分配挙動に与える影響を調べていく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度の上半期は、新型コロナウイルスの流行によりSPring-8やKEKのような大規模放射光施設での研究が中止になることが頻発した。そのため、X線吸収分光法のような放射光実験は、研究施設での実験の制限が緩和された下半期を中心に行われた。しかしながら、当初予定していてた高圧下その場XAFS測定手法の開発に加えて、その手法を使用して、高圧下玄武岩ガラス中に含まれるタングステンの局所構造を明らかにした。これらの研究をまとめた論文を国際学術誌に投稿し、令和3年度の4月に採択されている。また、溶融ケイ酸塩-液体鉄間の微量元素の分配実験から、溶融ケイ酸塩-固相ケイ酸塩の元素分配実験にシフトしたものの、高圧下の元素分配実験についても十分に研究が進んでいる。このように当初の計画で予定されていたものは、計画通りに進展している。さらに、令和3年度に予定していた鉄元素についての高圧下その場XAFS測定手法に向けてのガスケットの小型化にも着手していて、十分な質のデータを得ることに成功している。そのため、当初の計画以上に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の計画としては、昨年度確立した鉄元素についての高圧下その場XAFS測定手法を使用して、玄武岩ガラス中に含まれる鉄元素の局所構造の圧力変化についての研究を進める。また、モリブデンをはじめとするその他親鉄性微量元素を含む試料についても高圧下XAFS測定を行い、微量元素の配位数変化の圧力応答を調べる。さらに、昨年度確立した手法では、10-70GPaの圧力条件での測定が可能であったが、今後は地球下部マントルの最下部に相当する135GPa程度の圧力条件で測定することを目指す。また、高圧下溶融ケイ酸塩-固相ケイ酸塩の元素分配実験を昨年度に引き続き行い、X線吸収分光法で得られた結果と合わせて微量元素の分配挙動を議論することを目指す。また、分配実験の微量元素の濃度測定手法が確立した後に、高圧下溶融ケイ酸塩-溶融鉄間の微量元素の分配実験を行うことを目指す。
|