研究課題/領域番号 |
20J21687
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
岩泉 滉樹 筑波大学, 理工情報生命学術院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 三次電池 / エナジーハーベスティング / 導電性高分子 / 低分子 |
研究実績の概要 |
「三次電池」の熱効率は、両極の酸化還元電位の温度係数αの差に支配されている。そのため、社会実装にはαの絶対値の大きな材料(巨大|α|材料)の創出が不可欠である。本研究の目的は、αの絶対値の大きな高分子(巨大|α|高分子)を創出することである。しかしながら、物質系が広い高分子において巨大|α|高分子を見出すには、効率的なスクリーニング法を確立する必要がある。 本年度に実施した研究では、本研究計画での高分子の概念を低分子へ拡張できるかの検証を行った。具体的な実施内容は以下である。 [1]低分子を酸化還元対として含む溶液中で電気化学測定及び酸化還元電位の温度係数αの実測を行った。テトラシアノキノジメタン(TCNQ)とテトラチアフルバレン(TTF)をアセトンに溶解させた溶質・溶媒系でのαとしてそれぞれ0.50 mV/Kと0.89 mV/Kが得られた。 [2]実測されたαに対してGaussianを用いた量子化学計算から支配要因の検討を行った。ここで熱力学より、αは酸化還元前後のエントロピー差を素電荷で除したものに等しい。そこでまず溶質分子について酸化還元前後の並進・回転・振動・電子配置エントロピー差を評価した。TCNQとTTFの各エントロピー差の和はそれぞれ0.057 meV/Kと0.102 meV/Kとなり、実測したαと同様な符号が得られたが定量的な値を説明するには不十分であった。 次に、溶質分子の酸化還元による溶媒分子の配置エントロピー変化に着目し、溶質分子の各原子において酸化還元前後のNPA電荷の変化量の大きさから”活性原子”の数を評価した。TCNQとTTFで電荷変化量が0.1 e以上と顕著である”活性原子”の数はそれぞれ6個と4個となった。そのためαは”活性原子”による溶媒分子の配置エントロピー変化が主要な項と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究では、本研究計画での高分子の概念を低分子へ拡張できるかの検証を行った。低分子系で実測したαを溶質分子の酸化還元前後の並進・回転・振動・電子配置エントロピー差から評価した。実測したαと同様な符号が得られたが定量的な値を説明するには不十分であった。 次に溶質分子の酸化還元による溶媒分子の配置エントロピー変化に着目し”活性原子”の数を評価した。この結果からαは”活性原子”による溶媒分子の配置エントロピー変化が主要な項と考えられる。そのため”活性原子”の数とαの相関の起源に迫ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
”活性原子”の数と実測されたαの相関を利用し量子化学計算から巨大|α|材料の創出を目指す。また、これまでに得られたデータをまとめ原著論文の執筆をおこなう。
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