研究課題/領域番号 |
20J21702
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大木 舞 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | ヒンドゥー教図像学 / ヴィシュヌ / クリシュナ |
研究実績の概要 |
本研究課題に取り組む第二年目となった今年度については、前半は所属研究機関である京都大学を拠点に、後半はフランス国立極東学院への留学を開始し、パリを拠点に研究を進めた。受け入れ教員であるシャルロット・シュミット教授は古代・中世ヴィシュヌ系図像に精通するばかりでなく、北インドにおけるヴィシュヌ(クリシュナ)信仰の聖地でのフィールドワーク経験も豊富であり、コロナ禍で現地調査が行えない状況の中で、本研究課題に対する多くの貴重な助言を与えて頂いた。 1. 図像の主題を考察するにあたり、通称として定着している「一切の姿を持つ」(サンスクリット語でヴィシュヴァルーパ)という語に文献史上どのような意味付けがなされていたのかという調査に着手した。紀元前後に成立したであろうヒンドゥー教の聖典『バガヴァッドギーター』は一つの分水嶺であると考えられるが、それ以前の文献におけるこの語の歴史的変遷を調べるため、まずはインド・アーリヤ文化の起点となる『リグヴェーダ』における用例を調べ、この段階では未だヴィシュヌを示す固有名詞化が生じていない事が判明した。 2. 昨年度より研究して来たヴィシュヌの化身が組み合わせとして記述された文献に対する分析を学会で発表した後、Journal of Indian and Buddhist Studies Vol. 70 に投稿した。 3. 昨年度作成した研究対象とする作例群(以下「本作例群」と称する)の作例リストに基づき、各図像の細部を検討し、可能ならば特定する作業を行なった。 4.本作例群のうち、初期の代表作例であるグプタ朝時代の作例(マトゥラー博物館所蔵、収蔵番号42-43.2989)の主題を解釈するに当たり、主に北インドにおける初期のヴィシュヌの図像の形成と発展を分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
あらかじめ予測していたことではあったが、今年度もインドにおいて本作例群の調査を行うという計画は遂行出来なかった。留学先のフランスを含む欧州では年末から再度コロナウイルスの感染者が急増したため、欧州各地の博物館での調査も次年度の夏に行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1. 本作例群のうち、初期の代表作例であるグプタ朝時代の作例(マトゥラー博物館所蔵、収蔵番号42-43.2989)の主題を解釈するにあたって主に北インドにおける初期のヴィシュヌの図像の形成を調べたところ、初期のクリシュナとヴィシュヌの図像の統合という新たな課題が浮かび上がった。ヴィシュヌ信仰の形成という観点から、図像資料だけでなく碑刻文などの文献資料をも用いた調査を行い、この課題に対する総合的な考察を加えたいと考えている。 2. 本作例群のうち、一作例がドイツの美術館に所蔵されている事が判明したため、熟覧調査に赴く予定である。 3. 「一切の姿を持つ」(サンスクリット語でヴィシュヴァルーパ)という語の叙事詩やプラーナ文献における用例を渉猟し、その文献史における位置付けを探る。
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