研究実績の概要 |
前年度は、ジホスフィン配位子と塩素配位子で保護されたAu13超原子に異種金属(M = Pd, Pt, Rh, Ir)を1原子ドープした際の発光特性への効果を調べた。これら超原子は、ドーパントの種類に応じてAu13超原子よりも高効率かつ長寿命の発光を示す。本年度はこれまでの知見をもとにMAu12超原子の新たな機能開拓を目指した。 まず、MAu12超原子がドーパントに依存した発光寿命と酸化還元電位を持つことに着目し、光レドックス触媒としての応用を試みた。触媒量のMAu12超原子存在下で白色光を照射するとビスエノンの[2+2]環化付加反応が進行した。MAu12超原子の触媒活性の比較から、IrAu12超原子とPtAu12超原子の触媒性能がとりわけ高いことを見出した。触媒反応の機構を調べるために消光実験を行い、光励起されたMAu12超原子が直接基質を還元していることを確かめた。また、電極触媒能に対するドープ効果についても韓国のYonsei Universityのグループと共同で検討した。 IrAu12超原子の発光量子収率が非常に高い(~65%)ことに着想を得て、高輝度な円偏光発光(CPL)を示す超原子の合成を行なった。ジホスフィン配位子をキラルなものに置き換えて、IrAu12超原子の鏡像異性体のペアを得た。IrAu12超原子はキラルなAu13超原子に比べて大きな円二色性を示し、その原因がIr原子のドープによる超原子コアのねじれの増幅であることを解明した。また、発光量子収率を比較すると、IrAu12超原子(~70%)はAu13超原子(~15%)よりも高い値を示した。その結果、IrAu12超原子のCPLの輝度はAu13超原子の5倍程度となった。 上記の研究は、異種金属ドープによる超原子機能化の設計指針を提供するものであり、超原子を構成単位とする超原子複合体の機能開拓につながると期待できる。
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