本研究の目的は,都市高速道路網における渋滞の時空間分布情報を活用したTransportation Demand Management (TDM)スキームの構築である.この目的を達成するために,本研究では3つの研究モジュールから構成されるアプローチを採用する: [1]都市高速道路網の長期間観測データの解析を通した渋滞時空間分布の特性解明, [2]渋滞ダイナミクスと道路利用者の選択行動との相互作用を記述した数理モデル:出発時刻選択問題の理論特性の解明,[3] [1]および[2]の成果を統合したリアルタイム渋滞時空間分布情報を活用するデータ融合型TDMスキームの開発と評価.本年度(2022年度)は,当初の予定と異なり,研究モジュール[3]については今後の重要な課題として,研究モジュール[2]の洗練化を中心に遂行した.
研究モジュール[2]では,コリドーネットワークを対象に,利用者の異質性(時間価値,希望到着時刻)を考慮した出発時刻選択問題に対するsystematicな解析手法を開発した.ここでは,均質利用者を仮定した従来研究で明らかにされていたDynamic System Optimal (DSO)状態とDynamic User Equilibrium (DUE)状態の理論的対応関係が,利用者の異質性を考慮した場合においても頑健に成立することを証明した.さらに,この枠組みを,労働者の勤務スタイル選択(リモートワーク,フレキシブルワーク)と居住地選択を内生化した拡張モデルに応用し,近年急速に定着しつつあるリモートワークやフレキシブルワークがといった施策が,通勤交通パターン・都市の空間パターンにどのような影響を及ぼすのか解析した.
|