研究課題/領域番号 |
20J21746
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
鈴木 颯 筑波大学, 人間総合科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 原腸胚 / 三胚葉 / レポーターマウス / FACS / ATAC-seq / RNA-seq / ゲノム編集 / ノックアウトマウス |
研究実績の概要 |
本研究では、マウス原腸胚における三胚葉形成について、クロマチン構造という観点から内胚葉、外胚葉、中胚葉それぞれで特異的なオープンクロマチン領域を同定することを目的とし、3つの課題に取り組んでいる。以下に令和3年度の研究実施状況を示す。 1.三胚葉形成において各胚葉で特異的なオープンクロマチン領域の探索:前年度に引き続き、三胚葉可視化レポーターマウス原腸胚の蛍光を用いたFACSで得られる胚葉細胞に対して、網羅的オープンクロマチン領域の解析が可能なAssay for Transposase-Accessible Chromatin Sequencing(ATAC-seq) のライブラリー作製の条件を検討した。 2.各胚葉の特異的オープンクロマチン領域と遺伝子発現との相関の解析:前年度に引き続き、三胚葉可視化レポーターマウス原腸胚の蛍光を用いたFACSで得られる内胚葉の細胞に対して、RNA-seq を行った結果、内胚葉特異的なアイソフォームが検出されたことから、内胚葉特異的な遺伝子発現を解析することに成功した。 3.オープンクロマチン領域の破壊による胚葉形成異常の確認:前年度に樹立した三胚葉可視化レポーターマウスES細胞内でCRISPR/Cas9を利用したゲノム編集を行い、三胚葉形成に必須なゲノムDNA領域を破壊したKO-ES細胞を得た。さらに、このKO-ES細胞を四倍体補完法にてキメラ胚へと発生させ、蛍光顕微鏡で観察することで、三胚葉形成に対する標的ゲノムDNA領域の機能評価系を確立した。 以上で得られた成果を3件の国内学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していたオープンクロマチン領域の探索および遺伝子発現との相関の解析を完了できなかったため、本研究の現在までの達成度はやや遅れていると考えている。一方、本年度は、三胚葉可視化レポーターマウスES細胞内ゲノム編集と四倍体補完法を組み合わせた三胚葉形成に対する各標的遺伝子の機能評価系を確立できたため、次年度の解析の促進に寄与することが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
以下に、各課題の今後の推進方策を示す。 1.三胚葉形成において各胚葉で特異的なオープンクロマチン領域の探索:三胚葉可視化レポーターマウス原腸胚の蛍光を用いたFACSで得られる胚葉細胞からクロマチンを含めた核DNA を回収・精製し、ATAC-seq用のDNAライブラリー作製を引き続き検討していく予定である。その際に細胞数の不足によるライブラリー作製の失敗が考えられる場合、三胚葉可視化レポーターマウスES細胞のin vitro分化誘導あるいは胚様体法によって各胚葉の細胞を大量に回収する方法も検討する。また、方法が確立できたら次世代シーケンス解析を行う。 2.各胚葉の特異的オープンクロマチン領域と遺伝子発現との相関の解析:内胚葉以外の外胚葉や中胚葉においてもcDNAライブラリーを作製し、遺伝子の発現を解析していく予定である。 3.オープンクロマチン領域の破壊による胚葉形成異常の確認:オープンクロマチン領域を破壊したKO-ES細胞の樹立、KO-ES細胞の四倍体補完法によるキメラ胚への発生および蛍光顕微鏡で観察することで、三胚葉形成に対する標的ゲノムDNA領域の機能を評価する予定である。
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