本研究では、マウス原腸胚における三胚葉形成について、クロマチン構造という観点から内胚葉、外胚葉、中胚葉それぞれで特異的なオープンクロマチン領域を同定することを目的とし、3つの課題に取り組んでいる。以下に令和4年度の研究実施状況を示す。 1.三胚葉形成において各胚葉で特異的なオープンクロマチン領域の探索:前年度に引き続き、各々の胚葉を蛍光で識別可能なMIERUマウス(内胚葉マーカーSox17遺伝子にEGFP遺伝子が、外胚葉マーカーOtx2遺伝子にtdTomato遺伝子が、中胚葉マーカーT遺伝子にTagBFP遺伝子がそれぞれノックインされている)ES細胞から三胚葉可視化キメラマウス原腸胚を作製・発達させ、FACSにて胚葉特異的な細胞集団を分取した。上記で分取した細胞に対して、ATAC-seqのライブラリー作製の条件を検討した。しかし、ライブラリー作製の成功には至らなかった。 2.各胚葉の特異的オープンクロマチン領域と遺伝子発現との相関の解析: 1.と同様に、EGFPタンパク質を利用したFACSにて分取した細胞で、三胚葉それぞれのマーカー遺伝子の発現を調べた。その結果、外胚葉および中胚葉のマーカー遺伝子の発現は内胚葉マーカー遺伝子よりも低い、あるいは発現が見られなかった。 3.オープンクロマチン領域の破壊による胚葉形成異常の確認:クロマチン構造の形成に機能するYbx1遺伝子を破壊したマウス原腸胚にてクロマチン構造解析し、野生型と比較することで、各胚葉形成に重要なオープンクロマチン領域を絞り込めると考えた。MIERUマウスES細胞にCRISPR-Cas9を導入してYbx1-KO ES細胞を作製し、2.と同様にキメラ胚の作製・発達させてEGFPタンパク質を利用したFACSにて細胞を分取した。その後、次世代シーケンサーを用いたデータ取得し遺伝子発現を解析した結果、Ybx1のKOが確認できた。
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