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2021 年度 実績報告書

理論構築とゲノム解析から種分化の謎を解き明かす

研究課題

研究課題/領域番号 20J21760
研究機関総合研究大学院大学

研究代表者

坂本 貴洋  総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2020-04-24 – 2023-03-31
キーワード集団遺伝学 / 性染色体 / 確率過程 / マラーのラチェット
研究実績の概要

種分化に関わる進化の過程において、ゲノムがどのように変化するのかについて、理論的なアプローチにより研究を行っている。2021年度は、前年度に引き続き、性染色体の進化プロセスに着目した。特に、X-Y染色体間 (あるいはZ-W染色体間) で組み換えが抑制された、性染色体進化の中期から後期のプロセスに注目した理論を構築した。
X-Y染色体間の組み換えが抑制されると、Y染色体はオスで常にヘテロで保持されるため、無性的に進化する。これにより、組み換えがある場合と比べて、有害変異を蓄積しやすくなる。この変異が蓄積するメカニズムはマラーのラチェットと呼ばれ、多くの理論研究がなされてきた。
近年のゲノム解析により、Y染色体上には多数の重複遺伝子が存在し、重複した遺伝子座間で遺伝子変換と呼ばれる遺伝情報のコピーが行われていることが分かってきた。この遺伝子変換は、無性的に進化するY染色体から有害変異を取り除くメカニズムとして働く可能性がある。例えば、重複した2つの遺伝子のうち、一方が有害変異を保持している状況を考える。このときに、有害変異を保持していない遺伝子の配列が、有害変異を持っている遺伝子にコピーされれば、変異は取り除かれる。一方で、逆方向に遺伝子変換が起こると、両方のコピーとも変異を保持する状態になり、有害変異の蓄積は加速する。遺伝子変換により、有害変異の蓄積速度がどのように変化するのかは、理論的に分かっていなかった。
本研究では、Y染色体上に多数の重複遺伝子が存在するモデルを構築し、数学的な解析とシミュレーションを併用し、遺伝子変換が有害変異の蓄積速度に与える影響について明らかにした。特に、コピー数の増加によって適応度が上がる遺伝子では、遺伝子変換によって劣化が遅くなり、適応度が上がらない遺伝子では、劣化が早まる傾向にあることを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

これまでに、当初計画していた自然選択と性選択を組み込んだ種分化モデルの解析に成功し、論文として発表できている。また、当初の計画を超えて、種分化の際に重要な役割を果たすと考えられている性染色体の進化モデルを構築し、発展させることができた。これらの成果も、論文としてまとめ、国際誌に発表している。以上の点から、研究が当初の計画以上に進展していると考える。

今後の研究の推進方策

種分化に関わる進化プロセスについて、引き続き理論の構築を行う。興味深い結果が得られている性染色体の進化プロセスに、引き続き注目する。性染色体がどのように形成され、性決定を支配するようになるのかについて、理論的な解析を行う。また、本プロジェクトで構築した理論の集大成として、性染色体と常染色体上の進化が協働して起こることで、種分化が実現するようなシナリオを考える。数理モデルを構築・解析することで、このシナリオの妥当性を検証する予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Muller’s ratchet of the Y chromosome with gene conversion2022

    • 著者名/発表者名
      Sakamoto Takahiro、Innan Hideki
    • 雑誌名

      Genetics

      巻: 220 ページ: 1-12

    • DOI

      10.1093/genetics/iyab204

    • 査読あり
  • [学会発表] 性拮抗選択によって駆動される性決定遺伝子座の遷移2021

    • 著者名/発表者名
      ○坂本貴洋、印南秀樹
    • 学会等名
      第93回 日本遺伝学会大会

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公開日: 2022-12-28  

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