研究実績の概要 |
r過程元素存在量に広がりのある球状星団M15の形成をシミュレートした。 球状星団近傍で中性子星連星合体が起きた場合、球状星団を形成する元となるガス雲が非一様にr過程元素を持つ。このようなガス雲から形成された球状星団はr過程元素存在量に広がりを持つ。 これまで球状星団を銀河形成シミュレーションで形成することは難しかったが、2020年の論文で星の爆発やその前の光の輻射の影響を適切に考慮すれば球状星団が形成されることが指摘された(Ma+2020)。そこで同様の手法を自分のシミュレーションコードに実装し計算を行ったところ、確かに球状星団が形成された。そこで形成直前のガス雲の近傍にr過程元素を模した成分を注入し、シミュレーションを実行したところ、r過程元素の混合の様子が観察された。その結果、星団形成の数千万年前に、約100pcほど離れた位置で中性子星連星合体のようなr過程元素合成イベントが発生したと考えると、M15のようなr過程元素分布が再現されることが明らかとなった。またナトリウムや酸素など軽元素の分散とr過程元素の分散には相関がない。そのため球状星団の星を2回に分けて形成するモデルより、一度に全ての星を形成するモデルの方が好まれることがわかった。 本研究の成果を論文にまとめ、astrophysical journal Lettersにおいて出版した。(Astrophysical Journal Letters, 921, 11L, 2021)
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