前年度までに、Translation-coupled RNA Replication System(TcRRシステム)の継代実験を模倣したシミュレーションモデルを構築し、これを用いて複数のHostおよびParasiteが共存するために満たされるべき、RNA間相互作用の条件を明らかにした。 本年度では、このシミュレーションモデルを改良し、RNAの進化を考慮したシミュレーションモデルを構築した。単独のHostからシミュレーションを開始したところ、構築されたネットワークのほとんどすべてが前年度に明らかにしたRNA間相互作用の条件に収まっていた。 以上の内容を、実際にTcRRシステムの進化実験で得られたRNAの配列および生理活性を解析することで、実験的にも正しいことを確かめた。まず、過去に行われたTcRRシステムの進化実験で得られたRNA配列を解析すると、ある段階でHostが2系統に分かれ、これらが維持される期間が存在することがわかった。さらにこの期間において、単独のParasiteが特に高濃度で維持されていたことがわかった。 次に、これら2種類のHostと1種類のParasiteが、シミュレーションで確かめられたRNAの共存において満たされるべき条件範囲に収まっていたかを明らかにした。具体的には、配列情報をもとに、in vitroでHostとParasiteを再構成し、これらを混合して複製効率を測定した。すると、一方のHostのみが顕著にParasite耐性を持ち、Parasite耐性を持たないHostが相対的に複製されやすいという、シミュレーションで明らかにされた共存条件が満たされていた。
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