研究課題/領域番号 |
20J21820
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小林 和弘 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | GPCR / 単粒子構造解析 / クライオ電顕 / 慢性疾患 |
研究実績の概要 |
Class B GPCRは細胞外にある特徴的なドメインを用いてペプチド性リガンドを認識する受容体群であり、慢性疾患に対する創薬標的として広く認知されている。創薬コストや高い受容体選択性の観点から、体分子作動薬開発が期待されており、受容体の立体構造を解明することによるリガンド認識機構の解明が求められている。研究計画の課題であったClass B GPCRの単粒子構造解析について、PAC1受容体で大きな進展があった。ヒトPAC1受容体にHis6-eGFP-TEVプロテアーゼ認識配列を付加して昆虫細胞Sf9において大量発現させ、NiNTAカラム、イオン交換カラム、ゲルろ過カラムを用いて高純度の精製に成功した。さらに独立して精製したGsタンパク質三量体と構造認識抗体Nb-35を用いてシグナル伝達複合体形成・精製にも成功した。このサンプルを用いてクライオ電子顕微鏡による単粒子構造解析を行い、ヒトPAC1受容体とGs複合体の立体構造を明らかにした。さらに本構造に基づいて東北大学井上准教授との変異体機能解析を行い、PAC1受容体の細胞外ドメインはリガンドの効率的な受容にのみ機能し、受容体の活性化には必須ではないことを明らかにした。その一方、Class B GPCRにおける代表的な受容体であるGLP-1受容体では、細胞外ドメインの寄与が受容体活性化に必須であることを解明し、細胞外ドメインの機能は、Class B GPCRにおいて多様性があることが明らかになった。この結果から、PAC1受容体に対しては膜貫通領域のみに注目した低分子創薬が有力である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
PACAPリガンドと結合したヒトPAC1受容体・Gsタンパク質三量体・Nb-35の高純度精製に成功し、PAC1受容体-Gs三量体-Nb-35からなるシグナル伝達複合体の精製に成功した。この複合体の構造解析によりPACAPリガンドの特異的認識機構を明らかにするとともに、その認識における受容体活性化能力と親和性において、PAC1受容体のそれぞれのドメインが別々の役割を担っていることを明らかにしたため。
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今後の研究の推進方策 |
異なるリガンドとPAC1受容体の構造解析や、異なる受容体での構造解析を通して、Class B GPCRにおけるリガンド認識メカニズムと、リガンド認識における細胞外ドメインの構造基盤を明らかにする。
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