本研究課題の中で主に以下の2つの研究に取り組んできた。 1. 大気観測に適した系外惑星を発見するため、トランジット観測(惑星が恒星の前を横切る時の減光量を見る観測)を用いて、宇宙望遠鏡TESSで見つかった惑星候補天体が本当に惑星であることを確認し、その性質を詳細に調べた。 2. 惑星大気組成を測定するためのトランジット分光観測において、恒星黒点はシグナルを歪めてしまう影響がある(トランジット光源効果)。赤色矮星におけるこの影響の程度を探るため、前年度から引き続き、サブネプチューンサイズの惑星を持つ赤色矮星K2-25の測光観測・解析を行ってきた。 地上望遠鏡と宇宙望遠鏡を活用し集中的な観測を行ったことで、これまでM型星に対して測定された中でも不確かさ100K以下という良い測定精度で黒点温度を求めることができた。また、得られた黒点温度が経験則から導かれるよりも恒星表面温度に近い値を示すことがわかった。ここから導かれるトランジット光源効果の程度は、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)での観測を想定した場合に大気シグナルの誤った検出に繋がりうる程度であることがわかった。この研究結果はK2-25bの将来的な大気観測にとって重要な情報となる。また、この研究の中で確立した測光・解析の手法および作成したパイプラインを用いて今後はより多数の赤色矮星について黒点温度・分布の制限を行っていく予定である。本研究内容は博士論文の一部としてまとめ、現在投稿論文を準備中である。
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